脳卒中
2026.08.10
脳卒中後に現れる「歩き方のクセ」4選〜ぶん回し・反張膝・内反尖足・トレンデレンブルグ歩行の原因と対策〜
こんにちは、理学療法士の松田裕之です。
リハビリを一生懸命頑張っているのに、なかなか歩きやすくならない…。「足が出にくい」「つま先が引っかかる」「膝がガクッとする」「歩くとすぐ疲れる」など、日常生活の中で不安を感じる場面はありませんか?実はそれ、筋力だけの問題ではなく、無意識のうちに「間違った動きのクセ」がついていることが関係しているかもしれません。
本記事では、脳卒中後の歩行でよく見られる4つの間違った動きのクセについて、その特徴と原因、そして対策の方向性を詳しく解説します。歩き方のクセは、本人にとっては「いつもの歩き方」になっているため、自分では気づきにくいことがあります。まずは自分の「クセ」を知り、どのような場面で出やすいのかを理解することから始めましょう。
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目次
脳卒中後の歩行における「間違った動きのクセ」とは
脳卒中後の歩行において、麻痺などの影響で本来の正しい歩き方ができず、他の筋肉や関節を使って無理やり歩こうとすることを「代償動作」と呼びます。この代償動作を繰り返すことで、脳がその動きを「新しい歩き方」として記憶してしまうのが「誤学習」です。
たとえば、つま先が床に引っかかりそうになると、身体は転ばないように足を外へ回したり、骨盤を引き上げたりして何とか前へ進もうとします。これは一時的には安全を守るための大切な反応ですが、その動きを毎日繰り返すと、かえって歩行の効率が悪くなり、疲れやすさや痛みにつながることがあります。
将来の転倒や痛みを防ぐためにも、早期の専門的な介入がカギとなります。大切なのは、「頑張ってたくさん歩く」ことだけではなく、「どのように身体を使って歩いているか」を確認することです。あなたの歩き方に、これから紹介するような「クセ」はありませんか?家族に後ろ姿を見てもらったり、可能であれば歩いている様子を動画で確認したりすることで、客観的に自分の歩き方を見直すきっかけになります。

4つの異常歩行パターン
脳卒中後によく見られる代表的な異常歩行パターンを4つご紹介します。それぞれの特徴と原因を理解し、ご自身の状態と照らし合わせてみてください。同じ「歩きにくさ」でも、原因が足首にあるのか、膝にあるのか、股関節や体幹にあるのかによって、必要な練習や注意点は変わってきます。
① ぶん回し歩行の特徴と原因
歩くとき、つま先が引っかからないように足を外側へ円を描くように回して歩く。これを「ぶん回し歩行」と呼びます。後ろから見ると、麻痺側の足がまっすぐ前に出るのではなく、外側を大きく回って前に出ているように見えるのが特徴です。ご本人は「足を出しているだけ」のつもりでも、周囲から見ると左右差が目立つことがあります。
原因は、足首を上げる力や股関節を曲げる力が弱くなっていることです。足が床に引っかかるのを防ぐために、無意識に骨盤を引き上げ、足を外側から回して前に出そうとしてしまいます。また、膝を曲げるタイミングが遅れたり、足首が硬くなっていたりする場合も、ぶん回し歩行が出やすくなります。心当たりがある方は、無理に足をまっすぐ出そうとする前に、まず専門家に歩行の状態を確認してもらうことが大切です。
② 反張膝(はんちょうひざ)の特徴と原因
麻痺側の足に体重を乗せた際、膝が後ろに反り返ってしまう状態を「反張膝」と言います。歩いているときや立ち上がった直後に、膝が「カクン」と後ろへ入るような感覚はありませんか?本人としては膝を固定して支えているつもりでも、関節には大きな負担がかかっていることがあります。
放置すると膝の痛みに繋がることもあります。特に、太ももの前側だけで膝を支えようとしたり、お尻や太ももの後ろ側の筋肉がうまく働かなかったりすると、膝が後ろへ反りやすくなります。太ももやお尻の筋肉を正しく使う練習、膝を軽く曲げた状態で体重を支える練習が必要です。無理せず、正しい体重の乗せ方を少しずつ覚えていきましょう。

③ 内反尖足(ないはんせんそく)の特徴と原因
足の裏、ペタンと床についていますか?足首が内側にねじれ、つま先が下を向いてしまう状態を「内反尖足」と呼びます。靴の外側ばかりがすり減る、足の小指側に体重が乗りやすい、立っていると足首が内側へ倒れる、といった様子が見られることもあります。
足の裏全体で接地できないため、バランスが崩れやすくなります。ふくらはぎの筋肉の緊張(痙縮)が原因であることが多く、足首が下向き・内向きに引っ張られることで、つま先が床に引っかかりやすくなります。この状態では、歩くたびに不安定さが増し、転倒のリスクも高くなります。
【痙縮(けいしゅく)とは】
脳卒中などの後遺症により、筋肉が過剰に緊張して硬くなり、手足が動かしにくくなったり、勝手に曲がってしまったりする症状のことです。
日々のストレッチでふくらはぎの筋肉を柔軟に保つことが大切ですよ。ただし、強く引っ張りすぎると痛みや筋緊張の増加につながる場合があります。ゆっくり呼吸しながら、痛みのない範囲で継続することがポイントです。必要に応じて、足首を安定させる装具を使うことも選択肢になります。
④ トレンデレンブルグ歩行の特徴と原因
歩くとき、腰が横に逃げていませんか?麻痺側の足に体重を乗せた際、反対側の骨盤が落ち込んでしまう歩き方。これを「トレンデレンブルグ歩行」と呼びます。歩いている本人は気づきにくいですが、後ろから見ると骨盤が左右に大きく揺れていたり、上半身を左右に傾けながら歩いていたりすることがあります。
お尻の横の筋肉(中殿筋)の筋力低下が主な原因です。中殿筋は、片足で立ったときに骨盤を水平に保つための大切な筋肉です。麻痺側の足で体重を支えきれず、骨盤を水平に保つことができなくなると、身体を横へ逃がすような歩き方になりやすくなります。横向きに寝て足を上げるトレーニングは効果的ですが、腰を反らせたり足を前に出しすぎたりしないよう、正しいフォームで行うことが大切です。

異常歩行パターン比較と対策の方向性
ご紹介した4つの異常歩行パターンについて、主な原因と対策の方向性を表にまとめました。
|
異常歩行パターン |
主な原因 |
対策の方向性 |
|
ぶん回し歩行 |
足首の背屈・股関節の屈曲低下 |
足首・股関節の筋力強化、骨盤の安定性向上 |
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反張膝 |
大腿四頭筋・殿筋群のコントロール低下 |
膝を軽く曲げた状態での体重支持練習 |
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内反尖足 |
下腿三頭筋(ふくらはぎ)の痙縮 |
ふくらはぎのストレッチ、装具の検討 |
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トレンデレンブルグ歩行 |
中殿筋(お尻の横)の筋力低下 |
中殿筋の筋力強化、体幹の安定性向上 |
これらのクセは、自分一人で修正するのは非常に困難です。見た目は似ていても、原因が筋力低下なのか、筋肉の硬さなのか、感覚の低下なのかによって、必要なリハビリは変わります。
専門家と一緒に「正しい中身」を整理し、プロの目で評価してもらいながら、あなたに合ったリハビリを見つけることが重要です。焦らず、安全に、少しずつ身体の使い方を学び直していきましょう。

FAQ(よくある質問)
ぶん回し歩行はどうやって直せばいいですか?
無理に足をまっすぐ出そうとすると、つま先が床に引っかかり、転倒のリスクが高まります。まずは座った状態で足首を上げる背屈練習や、股関節を曲げる練習など、基礎的な筋力やコントロール能力を高めることから始めることをお勧めします。歩く練習をする場合も、手すりや介助者がいる安全な環境で行いましょう。必要に応じて装具の使用も検討します。
反張膝を放置するとどうなりますか?
膝の関節に過剰な負担がかかり続けるため、将来的に膝の痛みや変形性膝関節症を引き起こす可能性が高くなります。また、膝を後ろにロックするような歩き方が習慣になると、歩行の効率も悪くなり、疲れやすさにもつながります。早めに正しい体重の乗せ方を練習し、膝だけに頼らず股関節や体幹も使って支える感覚を身につけることが大切です。
ストレッチは、痛くても強くやった方が効果がありますか?
いいえ、痛みを伴う強いストレッチは逆効果になることがあります。筋肉が防御反応を起こしてさらに硬くなる可能性があるため、痛みのない心地よい範囲で、ゆっくりと時間をかけて伸ばすことが重要です。目安としては、呼吸を止めずに会話ができる程度の強さで行うと安全です。痛みやしびれが出る場合は、無理をせず専門家に相談しましょう。
中殿筋トレーニングは、立って行うべきですか?
筋力が不十分な状態で立って行うと、代償動作が出やすくなります。まずは横向きに寝た状態(側臥位)で足を上げるトレーニングなど、重力の影響を少なくした安全な姿勢から始めるのが効果的です。慣れてきたら、立位での体重移動や片足支持の練習へ段階的に進めていきます。大切なのは、回数をこなすことよりも、骨盤が傾かない正しい形で行うことです。
悪い部分が複数ありますが、どこから直せばいいですか?
複数の異常歩行パターンが合併しているケースはよくあります。たとえば、内反尖足によってつま先が引っかかりやすくなり、その結果としてぶん回し歩行が出る、というように複数の問題がつながっている場合もあります。どの問題からアプローチすべきかは身体の機能評価を行って優先順位を決める必要があります。理学療法士などの専門家に相談し、個別のアセスメントを受けることをお勧めします。
