リハビリのこと
2025.12.16
『言葉が観えない…でもそこにある!』
認知神経リハビリテーション学術集会
―見えない“言葉”をどう観るか―
はじめに
先日、「認知神経リハビリテーション学術集会」のセッションで、中里瑠美子先生による『言葉が観えない…でもそこにある!』という発表を拝聴しました。中里先生は私の元同僚で、現在は東京で自費リハビリに従事されています。患者さんの目線に立ち、臨床家として常にお手本となる先生の講義を直接聴くことができ、大変貴重な機会でした。
言語は、患者さんの内的世界に近づくための最も重要な入口です。しかし、脳血管障害後には、その“入口”が変質したり曖昧になったりすることがあります。言葉としては聞こえても、その真意や背景にある経験を正確に理解することは簡単ではありません。
今回のセッションは、「目に見えない言葉をどのように観るのか?」という問いに対し、臨床家としての視座を広げる示唆に富んだ内容でした。患者さんの言語の奥にある想いに寄り添い理解することの重要性を、改めて実感できる時間となりました。
言語は「運動・視覚・象徴」の統合で成立する
中里先生はブルーナーの「3つの表象」を引用されていました。
- 行為的表象(運動)
- 映像的表象(視覚・イメージ)
- 象徴的表象(言語)
言語は単独で成り立つものではなく、
運動と視覚のシステムの上に立ち上がるものだ という考え方です。
つまり、
- 運動の理解が変われば、言葉も変わる。
- 視覚イメージが変われば、内言語も発現する。
実際、運動イメージ課題の最中に、意識しないまま突然文レベルの発語が生まれるケースも臨床で観察されるとのことでした。
「言葉がない」と見なされていた場面にも、
実は“言葉の前駆体”となる体験や感覚が存在している
という示唆に満ちたお話でした。
私が特に感銘を受けた視点
言葉がなくても、患者さんと自分の間には“共有されている何か”があります。
それは、経験のまとまりであり、スキーマであり、
まだ言葉にならない“意味”そのものです。
この視点は、
言語症状が重い方(失語症)との関わりにおいて特に重要 であると強く感じています。
講師の臨床で起きた印象的な場面
脳卒中後の後遺症をもつ方に肘関節の屈伸を説明したときのことです。
- 麻痺側の肘関節 → 「たたむ」「広げる」と表現
- 健側の肘関節 → 「曲がる」「縮む」と表現
同じ動きであるにも関わらず、言葉の構造が違う のです。
この時、中里先生はこう感じたと話されていました。
「動きの認識の違いが、言葉の違いとして現れているのではないか?」
患者さんと一緒に「たたむ/広げる」のイメージを確かめていくと、
驚くべきことに “傘のジョイントの動き” を患者さんが想起されました。
ここで一つの仮説が生まれます。
肩と肘の動きが分離できておらず、
その結果「たたむ・広げる」というイメージとして経験されてしまうのでは?
そこで 関節の動きの識別課題 を段階的に実施されました。
すると、
- 肩と肘の動きを別々に感じられるようになる
- 放散反応が消失する
- 運動イメージが立ち上がる
という変化が生まれました。
このような変化があり、結果的に動作が改善されることはセラピストとして嬉しいところではありますが、中里先生は 「ここで終わってはいけない」と強調 されていました。
ここで重要なのは、
という視点です。
※perceptionとは「その人が世界と自分の身体をどう感じ、どう意味づけているか」という主観的な体験のこと。
感覚の変化を
→ 動作の計画
→ 行為の再構築
へとつなげていくことこそが、
麻痺の改善として本質的である と強く感じています。
感想
「言葉がない」のではなく、「まだ観えていないだけ」
今回の中里先生のセッションは、
私たちが見ている“言葉”はごく表層であり、
その背後には 運動・感覚・イメージ・記憶・経験 が複雑に統合された
豊かな内的世界が存在することを再認識させてくれました。
このように、
個人的なリアルなイメージと情報の統合(個別性)が、それぞれの患者さんの中に存在している
ということを改めて実感しました。
つまり、 個別性に基づく治療や解釈こそが重要である ということです。
そして、
言葉は“患者さんとセラピストの間”に生まれる
という感覚を、より強く再認識する機会となりました。
これからも、
見えないけれど確かに存在する“ことばの源泉”をともに掘り起こしながら、
その人の世界に寄り添うリハビリを続けていきたいと思います。

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