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2024.05.31

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選脳卒中後遺症として片麻痺が残存し、手を上手く動かせなかったり、日常生活動作で使い辛かったりしてお困りの方は多いと思います。脳卒中後の後遺症では、上肢の機能は下肢の機能より回復が遅れやすい傾向にあります。その理由として、腕から手にかけて多くの筋肉が存在し繊細な動きが求められるため、脳の中で下肢を支配する領域よりも手を含む上肢を支配する領域の方が広いからだと考えられています。

片麻痺になると物をつかむ、離す、操作するといった、日常生活の中で当たり前のようにできていた動作ですら容易ではなくなってしまいます。そのため、リハビリで手の機能を向上させる事は、日常生活動作の質を改善するためにとても大切です。今回は、麻痺した手の回復過程や回復のためのポイントについて解説していきます。脳卒中を発症し今後の生活のことや体のことでお悩みの方に知っていただきたい内容となっています。ぜひ最後まで一読ください。

麻痺した手の回復過程について

脳卒中後の回復過程は障害を受けた脳の部位や病巣の大きさによって一人一人異なります。重症であれば、指を伸ばす動きや、つまむといった細かい動きが困難になります。軽症であれば日常生活で実用的に使えるまで回復することがあります。

脳卒中を発症してから2週間以内には、脳内で発症前と異なる神経のネットワークを再構成し始めます。また、発症後1ヶ月はシナプス可塑性(神経のつながり)を高められる最も重要な時期であり、回復の大部分が発症後3ヶ月以内に起こるとされています。この時期にいかに麻痺手の使用頻度を増やせるかが重要になってきます。その後、回復の過程は緩やかになっていきます。

従来、発症後6ヶ月以上経過すると麻痺が回復する可能性がないとされ積極的にリハビリを行うことはありませんでした。しかし、麻痺した手足を積極的に動かしていくことで脳の他の部位が役割を代行するために脳細胞を再構築することが明らかになりました。そのため、6ヶ月を経過していても十分なリハビリを積極的に行うことで手の動きが改善する可能性があります。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選

麻痺した手の評価方法とは?

私たちはリハビリの中でブルンストロームステージ(Brunnstrom stages)という評価法を用います。主に脳血管障害による麻痺の程度を評価するためのスケールです。麻痺の回復過程を分類したもので、定期的に評価を行うことで経時的な変化を把握することができます。このスケールの評価は上肢・手指・下肢の機能を総合的に評価しstageⅠ〜Ⅵまでの段階に分類します。それではブルンストロームステージについて説明していきます。

ブルンストロームステージ(Brunnstrom stages)

◉ステージⅠ:弛緩性麻痺
麻痺した筋の動きがない。自分で全く動かせない状態。

◉ステージⅡ:連合反応の出現
非麻痺側で力んだ際に、随意的ではない麻痺側の筋の収縮が見えたりする状態。

◉ステージⅢ:共同運動パターンの出現
手や足の筋肉の緊張(痙性)が強くなり、共同運動パターンといって、手や足を曲げようとすると手や足の全体が曲がる屈曲パターンと、手や足を伸ばそうとすると手や足の全体が伸びる伸展パターンが見られる。

◉ステージⅣ:痙縮が低下し、分離運動が出現する
分離運動といって部分的な運動のコントロールが可能となってくる。痙縮は軽減し個々の筋肉を動かす動きが出てくる。

◉ステージⅤ:分離運動の進行
痙縮がより軽減し、複雑な動きや繊細な動きが行えるようになってくる。

◉ステージⅥ:分離運動が進み正常に近づく
痙縮の影響がほとんどなくなり、協調的な運動(調整を保って複数の筋肉によって遂行される滑らかな運動)が可能となる。

脳卒中を発症し片麻痺症状を呈した患者さんの一般的な回復過程としては、まず随意運動(自己意思・意図に基づく運動)が全くない状態から筋収縮(痙縮)が生じるようになり、痙縮が強くなって手を挙げようとすると肩・肘・手が一緒に動いてしまう共同運動が見られるようになります。その後、痙縮は軽減し関節ごとの分離した動きができるようになってきます。分離運動が進むことで手足の細かい動作やほぼ正常な運動ができるようになるのです。ブルンストロームステージではこのような一連の流れを上肢、手指、下肢それぞれ評価していきます。では、次に手指の回復過程を解説していきます。

手指のブルンストロームステージ

◉ステージⅠ:全く動かせない。筋収縮なし。

◉ステージⅡ:わずかな筋収縮あり。

◉ステージⅢ:下図どちらかが行えればⅢでⅣに移る。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選
◉ステージⅣ:下図どちらかが行えればⅣでⅤに移る。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選◉ステージⅤ:下図全て行えたらⅤでⅥに移る。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選
◉ステージⅥ:様々な動きで巧緻性を確認する。指を完全に伸ばせる。

これらの手の動きができるか、できるようになっているかを定期的にチェックが行えると手の機能回復の変化を知ることができ、リハビリを行うモチベーションにつながります。

手の機能を引き出すポイント

手の機能を引き出すために大切なポイントを解説していきます。

無理に伸ばさない

指が硬いからといって無理に引っ張って伸ばしたりすると筋肉や関節を痛める可能性があります。特に脳卒中後遺症の方で感覚障害がある場合にどのくらい伸ばしているかなどの感覚が感じづらい為注意が必要です。脳卒中後遺症で片麻痺症状がある方で痙縮が強く見られる方は手指が硬くなりやすいです。

手や上肢を動かす上で手指の柔軟性を保つことは非常に重要です。手にはたくさんの筋肉が存在します。特に指を曲げる筋肉に力が入りやすく指を伸ばしにくくなることが多いです。また、手のひらの内側にある筋肉は動かす機会が減るため硬くなりやすいです。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選

手首を曲げると指が伸びやすい

痙縮が強く指を上手く伸ばせない場合、手首の曲げ伸ばしを合わせて行うと指を伸ばしやすくなります。手首を手のひら側に曲げると指が伸びてきます。反対に手首を手の甲側に曲げると指は曲がってきます。このような現象をテノデーシスアクション (テノデーシス効果)と言います。従って麻痺側の手首を手のひら側に曲げた状態で、非麻痺側の手を使いながら手指の関節の可動域を広げていきましょう。非麻痺側の手で関節のこわばりをほどきながら指を伸ばす練習を行えると効果的です。

【理学療法士が解説】脳卒中後の手の機能を高める方法3選

手で体を支える

手の痙縮が取れてきたらベッドや机に手をついてみましょう。指が曲がってしまう方は非麻痺側の手を使い愛護的に伸ばしていきましょう。また、指と指の間を離しながら手を広く開いていきます。痙縮が強く指が伸ばせないといった方は無理をせずに手の手根部というとこで手をつきましょう。手をつくことができたら少し体重をかけながら手で支える練習を行なっていきます。手で支えることにより肩甲帯(肩甲骨周囲)-腕-手までの支える力が強化されます。肩や腕の支えがしっかりしてくると手先のコントロールを行いやすくなります。

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準備を入念に

脳卒中を発症すると後遺症の一つで「半側空間無視」という、片方の空間にある物を見落としてしまうといった症状が残ることあります。例えば体の左側については見えていても認識できないのです。そのため、自分の手がちゃんとあることを脳に認識させたうえで神経や筋肉を働かせていくことが重要となってきます。日常生活の中では、ご飯を食べるときに麻痺側の手をだらんとさせずに机の上に置くようにしましょう。これは、自分の視覚で麻痺側の手を脳に認識させるためです。痙縮が強くて肘が伸びにくい場合や手をつくと痛みがある場合はタオルを机の上に置いて高さ調整やクッション変わりにするといいですよ。

次に麻痺側の手を脳に認識させる方法として触覚を用います。触っている感覚を手から脳に刺激を入れることで、徐々に刺激を感じ取りやすくなり、固まった手を緩めやすくなります。自分の視界に入ったところで、非麻痺側の手で麻痺側の手をマッサージしたりさすったりしてみてください。麻痺側の手のひらの感触を感じること、手や腕の位置を触りながら確認することが大事です。自主トレーニングにおいても同様で以上の点を意識して行えるとより効果的なものとなります。

まとめ

いかがでしたか?今回は脳卒中発症後の後遺症で片麻痺症状が残り、手が動かしにくいといった方に向けて、手の機能を向上させるためのポイントを解説していきました。脳卒中を発症し脳の神経細胞が損傷・死滅してしまうと脳が発する運動指令が筋肉に伝達されなくなります。そのため、手足を自分の意思で動かせなくなるという運動麻痺という現象が引き起こされるのです。後遺症として運動麻痺が残ると痙縮や感覚の低下が起こり、手足が動かしにくくなります。そのため、どうしても非麻痺側に頼り、非麻痺側ばかり使ってしまいます。このことにより、麻痺側の手にある筋肉や腱、関節がどんどん硬くなることで更に動かしにくくなってきます。だからといって麻痺側の手足を使わないでいると動きの変化に期待はできません。手足が動かしにくい中でも積極的に麻痺側を動かしていくが重要なのです。それは、脳の可塑性といって脳出血や脳梗塞により障害を受けた脳が、学習や経験に対応して変化し、新たな環境や体の状態に適応しようとする能力があるからです。これは、脳卒中によって思い通りに動けない脳の神経細胞があったとしても、その周囲に存在する他の神経細胞がお互いの結びつきを活発に変化させて、もう一度元通りに動けるように脳が変化を続けていることを意味します。

「継続は力なり」日常生活の中で少し意識するだけでも数ヶ月後には大きな変化が得られる可能性があります。ぜひ今回の記事の内容を参考にしていただき、日々の生活や自主訓練の際に役立てていただけると幸いです。

 

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