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リハビリのこと

2025.12.05

恐怖感と注意は姿勢バランスをどう変えるのか

― 認知神経リハビリテーション学術集会の学びと、臨床へ活かす視点 ―

先日参加した「認知神経リハビリテーション学術集会」のセッションでは、
“姿勢バランスは身体だけでなく、認知が大きく揺らす”ということを改めて感じました。

特に印象に残ったのが、恐怖感(fear)と注意(attention)が姿勢制御に強く影響するという一連の研究群です。
本記事では、学会で得た知見と、実際の臨床で役立つ視点を私なりに整理してみます。

はじめに

1. 恐怖感が引き起こす「硬直化」の姿勢反応

高い場所や転倒リスクの高い場面(=姿勢脅威条件)では、次のような変化が起こることが知られています。

  • 重心が後ろに引かれる
  • 足圧中心(COP)の動揺が小さくなる
  • 動揺の周波数は増える

これは典型的な “硬直化(stiffening)反応” で、
「動かないように身体を固める」制御戦略です。

特に興味深いのは、
“恐怖を自覚していなくても”硬直化が起きるという点です。
身体は環境の脅威を敏感に察知して自然に硬くなるのです。

2. 恐怖感は“注意”を変え、その結果として姿勢が変わる

Ellmers(2022)は、恐怖によって

  • 身体の動きを過剰にモニタリングする(内的焦点化)
  • その結果、姿勢制御がさらに硬く、不安定になる

と示しています。

つまり、

恐怖 → 注意が身体内部へ向く → 姿勢が硬くなる

という流れが生まれるわけです。

3. 注意の向け方が姿勢を大きく変える

注意が “どこに向いているか” で姿勢制御はまったく変わります。

  • 内的焦点(internal focus)
  • 筋や関節、動揺を意識しすぎる
    → 高周波な揺れが増え、不安定
    → パフォーマンス低下
  • 外的焦点(external focus)
  • 足元のマーカー、前方のターゲット、環境
    → COPの揺れが整い、自然で安定
  • Holistic focus(全体的イメージ)
  • 「ふわっと立つ」「地面に吸い付くように」
    → 認知負荷が下がり、安定しやすい

4. 小児と高齢者で異なる姿勢脅威下の反応

学会で紹介された知見を整理すると…

  小児
  • 高所では動揺が大きい
  • 平地では小さい
    → 制御スキルの未熟さ
  高齢者
  • 高所では動揺が小さくなる(=硬直化)
  • 平地での動揺はむしろ増える
    → 「危険だ」と感じるほど固めすぎる

つまり、

“ブレない=良い”ではなく、硬くて脆い安定戦略になる

という視点が重要です。

5. なぜ注意が姿勢を変えるのか

本来ヒトは

  • 身体内部を逐一モニタリングするのではなく
  • 外界との関係のなかで自然に姿勢を調整する

しかし、

  • 恐怖
  • 不安
  • 痛み
  • 慣れない課題

があると注意が身体内部へ向きます。

結果として、

  • 共同収縮(身体のこわばり)が増える
  • “ブレてはいけない”という意識が強まる
  • 姿勢が硬くなり、不安定になる

という現象が起こります。

6. 臨床でどう活かすのか

① 恐怖を減らす環境設定

  • 支持物の配置
  • 段差や高さの調整
    → 外的焦点化が促され、硬直化が減る

② 二重課題(dual-task)

  • 会話
  • 数字や言語の課題
    → 注意が外へ向き、自然なバランスへ戻る

③ 外的焦点の設定

  • 足元のライン
  • 前方のマーカー
    → COPが整いやすくなる

④ Holistic focus(イメージ)

  • 「ふわっと立つ」
  • 「一本の軸で立つ」
    → 過度な分析的制御を避ける

まとめ

  • 恐怖感は姿勢を硬くし、不安定にする
  • その影響は「注意」を介して増幅される
  • 外的焦点化や環境設定によって、自然で安定した姿勢へ戻せる

私自身の気づきとこれから

今回のセッションを通してあらためて感じたのは、
「姿勢の安定=筋力」では決して語り尽くせない世界がある ということです。

とくに印象的だったのは、
恐怖によって乱れたバランスが、
“外への注意(外的焦点)”へ向けるだけでスッと整っていく
という研究の流れでした。

これは、これまで私が臨床で経験してきた“体が固まるような恐怖”と
“注意の向け方で抜けていく力み”に、まさに重なるものでした。

これからのリハビリで大切にしたいこと

今後のリハビリでも、次の2つの視点をこれまで以上に重視していきたいと思います。

  • “恐怖を減らす” アプローチ
  • “注意をどこへ向けるか” のデザイン

筋力だけでは説明できない“自然な安定”を引き出すためには、
患者さんが力みすぎず、身体に任せられる状態を作ることが不可欠です。

■ 不安は「気のせい」ではありません

もし患者さんご自身が
「立つとこわい」「転びそうで不安」と感じているとしたら、
それは 気のせいではなく、身体が示すごく自然な反応 です。

そして、その不安が少し和らぐだけで、
バランスは驚くほど改善する可能性があります。

最後に

私たちは、安心できる環境の中で、
“無理なく、自然な姿勢”を取り戻していくリハビリ を一緒に進めていきます。

不安があっても大丈夫です。
その一つひとつに寄り添いながら、
あなた本来の動きや安定性が戻るプロセスを支えていきます。

リハビリZONE岐阜では、『今よりもっと楽しい未来へ』を合言葉に、最先端の機器と専門的な技術・知識を駆使してあなたの回復を最大限サポートいたします。
リハビリは 「できることを増やし、次の目標に向かう挑戦の連続」 でもあります。私たちは、利用者様が 「もう変わらない」「限界かな」 と諦めるのではなく、「もっと良くなる」 という前向きな気持ちでリハビリに取り組めるよう、全力でサポートしていきます。
是非一度、体験リハビリを受けてみてください!スタッフ一同心よりお待ちしております。

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