リハビリのこと
2024.09.10
【理学療法士が解説】本当に ”正しい姿勢”、知っていますか?
〜正しい姿勢とは?姿勢が変われば動作も変わる?!〜
こんにちは、リハビリZONE岐阜、理学療法士の後藤です。当施設のブログをご覧いただきありがとうございます。皆さん、ご自身の姿勢を鏡や写真で確認したことはありますか?
あなたが正しいと思っている姿勢、実は間違った姿勢かもしれません!姿勢が悪いと、肩こり、腰痛など局所的な痛みの原因や、身体の動かしにくさにつながることもあります。
今回は、姿勢についてセルフチェックの方法について解説していきます。姿勢を良くしたいと思っている方だけではなく、日常生活動作が行いにくいといった悩みを抱えている方にもおすすめの内容となっています。ぜひ最後までご覧になってください。
目次
姿勢とは…?
「姿勢」という言葉を辞書で調べてみると、
①からだの構え、からだつき
②事にあたる態度(広辞苑3版)
とあり、心と身体の状態を表します。心と身体は密接に関係しており、心に不調があると姿勢も悪くなる傾向にあります。また、運動や動作は姿勢が時間的に連続して変化したものであり、動作の出発点でもある”からだの構え(姿勢)”がいかに重要であるかが分かります。
理想的な姿勢
いわゆる「理想的な姿勢」とは、横から見たときに、骨盤の上に上半身が乗り、その上に頭が乗る一直線の姿勢、前から見たときに、左右への身体の傾きがない姿勢です。横から見た時の目安として、耳垂(耳たぶ)―肩峰(肩の先端)―大転子(股関節の出っ張り)―膝関節前方(膝のお皿の後方)―外果(外くるぶしの2~3㎝前方)が一直線に位置している状態を指します。
なぜ、この姿勢が理想的かというと、全身の関節や筋肉の負担が少なくなるからです。例えば、肩よりも頭が前に位置している状態では、頭を支えるために頸部の筋肉の緊張が高くなります。また、背骨のS字カーブが崩れていると、身体を動かした時の衝撃を上手く吸収できなくなり、効率的に安定して動くことができません。
姿勢が悪くなる原因
姿勢が悪くる原因は、さまざまですが、大きく分けると
①日常生活の習慣や癖 ②運動不足 ③背骨の変形 ④精神状態
が挙げられ、筋肉・関節・骨など身体のバランスが崩れる事により姿勢が悪くなります。
①日常生活の習慣や癖
腰掛けているときによく足を組んでいる。長時間のパソコン操作、スマートフォン操作で前のめりになっている。気づいたら片方の足に重心を乗せている。鞄や物を同じ方の手ばかりで持っている。など、このような習慣は、筋肉が偏ってしまい、左右差が生まれるため理想的な姿勢を維持することが難しくなります。
②運動不足
身体を動かさないことによって、身体が硬くなり、筋力が落ちて、バランス不良が生じやすくなります。筋肉の中で「抗重力筋」といって地球の重力に対して立位や座位などの姿勢を保持する筋肉があります。大きく、大別すると「背中、腹筋、殿部、太もも、ふくらはぎ」についています。この抗重力筋は、身体を動かしているときに働くわけではなく、無意識に姿勢を保持している時に働いている筋肉です。この筋肉が衰えてしまうと重力に対して理想的な姿勢を保持することが難しくなります。
③背骨の変形
加齢変化により、背骨と背骨の間にある椎間板の弾力性が失われ、つぶれたりすることで背骨の変形が進みます。また、骨粗しょう症性の圧迫骨折によって背骨の変形が増強することもあります。
④精神状態
良くないことがあり自信がなくなってしまったり、落ち込んだり、心が緊張すると、無意識に首・背中を丸めた前屈みの姿勢になってしまいます。
脳出血・脳梗塞後の姿勢の特徴
理想的な姿勢の指標
前から見たときに左右への身体の傾きがない状態=左右対称になっているかどうか、という点が挙げられます。そのためには、左右の足の裏にかかる体重が均等であることが重要です。しかし、脳出血・脳梗塞後に片麻痺症状を呈した方の多くは左右への身体の傾きが生じます。
片麻痺により身体が傾く理由
これには、いくつか理由が考えられます。例えば…
・麻痺側の感覚が鈍いために体重をかけるのが怖い
・杖などの道具に頼りたい
・自分の中ではここが真ん中だと認識しているが実際は異なる
身体の傾きが生じることによる問題
身体の左右の傾きが生じることで、
・麻痺側への荷重が少なくなり、脚の筋力が衰えてしまう
・体重をかけている腰や膝などに痛みが出現する
・麻痺側の手足の存在を忘れてしまう
などといった問題点が起こり得ます。
身体の重心位置が中央からズレてしまうことで手足の動かしにくさを助長することがあります。例えば、右手で右前方にあるものを取ろうとした時に、体重を過度に右に寄せて手を伸ばした時と、過度に左に寄せて手を伸ばした時では、手の伸ばしやすさが異なると思います。そのため、姿勢の傾き(重心位置)の改善を図っていくことが重要になります。
効果的な訓練方法
具体的には、
・鏡の前で重心位置を確認して正しい位置を知る
・意識的に麻痺側を使うようにして麻痺側手足の存在を脳に認識させる
・麻痺側の下肢への荷重訓練を行う
ことなどが効果的です。
理想的な姿勢をとるポイント
皆さん、「良い姿勢をとってください」と言われたらどのような姿勢をとりますか?胸を張ったり、背筋を伸ばしたり、足を踏ん張ったり、色々な部分を意識すると思います。これらは間違いではないですが、意識が強すぎると身体の力みが生まれ、逆効果になってしまいます。
また、良い姿勢で歩こうとして意識しすぎて、力が入ることで身体が固まってしまうこともあります。これらの問題を解決するために重要なことは「身体の軸伸展」を意識することです。伸展とは、伸び広がる・伸ばし広げるという意味です。つまり、「軸伸展」とは身体の真ん中の軸を上下に引き伸ばすことを指します。言い換えると天井から糸で吊られるようなイメージです。注意点として、伸びようとして身体を後ろに反らさないようにしてください。
理想的な姿勢を維持するためには、この「身体の軸伸展」が重要になってきます。人間は生きている上で、重力の影響を受け続けながら生活しています。そのため、重力に抗した真上に伸びた姿勢を保つことが大切なのです。
姿勢のセルフチェック
自宅でも行える簡単な姿勢のセルフチェック方法をご紹介いたします。
壁を使ったセルフチェック
まず、壁に背を向けて踵、殿部、背中、頭をつけ、顎を引いた状態で立ちます。
①腰に手を入れた際に手のひら一枚分入るくらいが理想的です。
②手のひらだけではなく、握り拳くらいの隙間があるものを反り腰とします。
③壁と腰の隙間に手が入らないものを猫背とします。
「良い姿勢」と「理想的な姿勢」
ここまでの解説では、「良い姿勢」ではなく「理想的な姿勢」と表現しています。この点に関して、説明していきます。先ほどの「身体の軸伸展」は人間の正常発達と深い関係があります。人間は、新生児として生まれたところから、寝返り、四つ這い、つかまり立ちを経て2本の足で立てるようになります。このように段階を経て、重力に潰されないように、バランスをコントロールしながら、姿勢を保っていきます。その過程の中で、腹筋や背筋の力がついてくる、手や足が自由に使えるようになる、背骨が軸上に伸びるなど、身体に必要な機能が備わっていきます。身体の軸伸展は、人間の成長過程において行われているものであり、身体の構造的に安定した姿勢に近づきます。そのため、効率的な動作やスムーズな歩行が可能になっていきます。よって、
「理想的な姿勢」とは無意識下かつ自然体で取れる格好。
「良い姿勢」とは、自分の中で正しいと思ってとる格好。
という形で区別しています。
姿勢改善エクササイズ
頭-肩-骨盤-足部の位置関係が一致した理想的な姿勢を目指すためのエクササイズをご紹介いたします。先程の壁を使ったセルフチェックで「反り腰」または「猫背」だった方には、特におすすめのエクササイズです。あなたはどちらのタイプに当てはまりましたか?
「反り腰」の方向けのエクササイズ
①仰向の状態で膝を立てる。
②手を天井に向かって伸ばし、脇を開き軽く肘を曲げる。
③脚を頭方向に持ち上げて背中と腰の隙間を埋める。
30秒キープ
注意点:顎が上がらないようにする。身体の軸(真ん中)を意識して手足を保持する。
「猫背」の方向けのエクササイズ
①うつ伏せの状態で手を上に位置させる。
②肘の内側で上体を支えて、頭から骨盤までを持ち上げる。
20秒キープ
注意点:頭から骨盤までが一直線になるようにする。頭が落ちず、背中が丸まらない。肩がすくまないように肩は下げて頭を突き出す。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、姿勢について解説していきました。全ての動作の始まりとなるのが「構え=姿勢」です。姿勢は、背骨の変形や日常生活の癖の積み重なりにより崩れが大きくなってきます。崩れが大きくなってくると、各関節や筋肉に負担がかかり痛みや痺れなどの自覚症状が出現します。また、自分が正しいと思っている姿勢が実は間違った姿勢になっていて、肩こりや腰痛の原因になっていることも多々あります。しかし、自分自身で姿勢を把握しにくいことが難点です。そこで、先程ご紹介した姿勢のセルフチェックを定期的に行いながら、姿勢改善エクササイズを行うことで理想的な姿勢の獲得を目指すことができるのです。
姿勢が悪いからといって、ただ単に背中を伸ばすことや胸を張ることだけが正しいとは限りません。特に、圧迫骨折の影響で背骨の変形が強く矯正が難しい方、脊柱管狭窄症を患っていて、腰を伸ばすことで疼痛や痺れが出現する場合は注意が必要です。ポイントは、身体の全体のバランスを捉えることです。大まかに頭-骨盤-足部の位置関係が直線上に整うことが重要です。一人で姿勢の把握・確認が難しい方は、ご家族や担当療法士にチェックしてもらいましょう。今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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