リハビリのこと
2025.02.11
【理学療法士が解説】パーキンソン病とALSの基礎知識とリハビリ
こんにちは、リハビリZONE岐阜の理学療法士、松田裕之です。
パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気をご存知でしょうか?これらは、進行性(徐々に病気の状態が進んで、悪化していく)の疾患として知られています。しかし、適切なリハビリや日常生活の工夫により、生活の質を高めることが可能です。また、予防法やご家族ができるケアのポイントも具体的にお伝えしていきます。
特に持病をお持ちの方、家庭内にご高齢の方がおられる方にも必見の内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください!
目次
神経変性疾患とは?
パーキンソン病について
パーキンソン病は、中枢神経系の神経変性疾患の一つであり、特に運動機能に影響を及ぼします。この疾患では、脳内の黒質という部位でドーパミンを生成する神経細胞が徐々に減少することが原因で、運動制御が困難になります。
代表的な症状には、手指の震え(振戦)、筋肉の硬直(固縮)、動作の遅れ(寡動)、および姿勢の不安定性(姿勢反射障害)があります。進行性であるものの、リハビリや薬物療法を適切に活用することで、日常生活に必要な身体機能を維持しやすくなります。初期段階では、小さな震えや筋肉のこわばりが見られることが多いですが、早期発見と治療が生活の質(QOL)を保つための鍵となります。
ALSについて
ALSとは、Amyotrophic Lateral Sclerosisの略で、日本語では【筋萎縮性側索硬化症】といいます。(以下、ALSと表記)
ALSは、運動神経が徐々に機能を失う進行性の神経疾患です。この疾患では、脳や脊髄から筋肉へ信号を送る運動ニューロンが障害されるため、筋力低下や筋肉の萎縮が発生します。初期症状には、手足の力が入りにくい、細かい動作が困難になるといった症状がみられます。
進行が進むと、呼吸機能に影響を与えることもありますが、人工呼吸器の利用やリハビリを通じて、可能な限り身体機能を維持することを目指していきます。また、精神面・心理面のケアも重要で、患者本人と家族の両方をサポートする包括的なアプローチが必要です。
症状と進行の程度は?
パーキンソン病の症状と進行
パーキンソン病の初期症状は緩やかに現れるため、気づかないことも少なくありません。
主な初期症状には以下のようなものがあります。
● 手足の軽い震え(振戦)
:特に安静時に片手や片足が震えることが多いです。
● 筋肉のこわばり(固縮)
:関節が動かしにくくなる感覚を伴います。
● 動作の遅れ(寡動)
:歩き始めや立ち上がりの動作に時間がかかることがあります。
進行とともに、これらの症状が日常生活に影響を及ぼし、歩行のバランスが崩れる、姿勢が前かがみになる、さらには転倒のリスクが高まることがあります。
病状の進行速度は個人差が大きいため、医師や理学療法士と連携しながら、症状に応じた対策を講じた専門的なリハビリテーションを行うことが重要です。
ALSの症状と進行
ALSの初期症状は特定の部位の筋力低下から始まることが多いです。
代表的な初期症状は以下の通りです。
● 手や指の動作困難
:ボタンを留めたり、細かい作業が難しくなることがあります。
● 足の筋力低下
:つまずきやすくなる、足が重く感じることがあります。
● 筋肉のけいれんや硬直
:夜間に筋肉がつるような症状が見られることもあります。
ALSは全身の筋肉に影響を及ぼし、最終的には呼吸筋まで進行する可能性があります。ただし、適切な呼吸管理や栄養管理を行うことで、症状の進行を遅らせることが可能です。定期的な評価を通じて、患者個々のニーズに応じたリハビリやケアを提供することが求められます。
リハビリ方法について
パーキンソン病のリハビリ
~理学療法と作業療法~
パーキンソン病におけるリハビリの主な目的は、筋力や柔軟性を維持し、日常生活の動作をスムーズにすることです。以下は代表的なリハビリ方法となっています。
【理学療法】
● ストレッチ
:筋肉の硬直を和らげ、関節の可動域を維持します。特に下肢や肩周りのストレッチが効果的です。
● 歩行訓練
:バランスを取りながら転倒を防ぐための練習を行います。専用の杖や歩行補助具を活用することもあります。
● 体幹エクササイズ
:姿勢改善を目的に、コアマッスルを鍛えるトレーニングを実施します。
【作業療法】
● 細かい動作の訓練
:ボタンを留める、箸を使うなど、日常生活の細かい動作をスムーズに行うための練習です。
【その他】
● 活動プランニング
:疲労を避けるために、作業や活動を効率的に計画する方法を指導します。
●最新技術の活用
:ロボット支援リハビリやバーチャルリアリティ(VR)を使用したトレーニングが注目されています。これにより、患者の運動意欲を高めつつ、リハビリ効果を向上させることが期待されています。
ALSのリハビリ
~機能維持と最新技術の活用~
ALSにおけるリハビリは進行に応じて身体機能を維持し、生活の質を向上させることを目標とします。以下が主なリハビリ方法となっています。
【機能維持のためのアプローチ】
● 関節可動域運動
:硬直した筋肉や関節を柔軟に保つためのパッシブストレッチが重要です。介助者によるサポートを伴う場合もあります。
● 呼吸リハビリ
:呼吸筋が影響を受ける前段階で、呼吸を深く行う練習や器具を用いた呼吸機能訓練を行います。
● 補助具の利用
コミュニケーションデバイス
:声が出にくくなった際に、タブレットや音声生成装置を使用して意思を伝えるサポートを行います。
● 移動補助器具
:車椅子や歩行器の利用により、日常生活での移動を支援します。
【最新技術の導入】
● ロボット支援機器
:筋力の弱い部位を補助する装置を活用して、自立した動作を促します。
● AIを活用した個別プログラム
:患者の進行状況に合わせた運動プランを提供する技術が進んでいます。
ALSのリハビリは患者個々の症状や進行状況に応じた柔軟な対応が必要であり、医療チームとの綿密な連携が求められます。
予防方法について
生活習慣のポイント
● 運動と食事で健康を守る
神経変性疾患の発症を予防するためには日常生活での適切な運動とバランスの取れた食事が重要です。
● 運動の習慣化
・有酸素運動
ウォーキングや軽いジョギングは、脳の血流を促進して神経細胞の健康を保つ効果があります。
・筋力トレーニング
筋力低下を予防するため、軽い負荷でのスクワットや体幹を鍛える運動を推奨します。
・柔軟運動
ヨガやストレッチを通じて関節の可動域を広げ、姿勢改善にも寄与します。
早期発見のポイント
神経変性疾患は進行性であるため、早期発見が生活の質を維持するために重要です。
● 身体の変化を見逃さない
手足の震えや動きの鈍さ、つまずきやすさを感じた場合は医師に相談することが推奨されます。筋肉の疲労やけいれん、言語や嚥下の困難など、小さな変化にも注意を払いましょう。
● 定期的な健康診断
神経内科やリハビリ科での評価を含む健康診断を受けることが疾患の早期発見につながります。特に家族歴がある場合、医師に相談して定期的なフォローアップを受けることが大切です。
● 認知機能や運動機能の自己評価
簡単な認知テストや運動テストを定期的に実施することで、異常の有無を早期に察知できます。予防において重要なのは、生活習慣を整えるだけでなく、健康診断や専門家のサポートを積極的に活用することです。
在宅生活のポイント 4選
❶ 環境の改善
家の中の段差を解消し、滑りやすい床には滑り止めを設置します。転倒防止のために、手すりや歩行補助器具の使用を促しましょう。
❷ 患者の自立をサポート
着替えや食事など、可能な限り患者自身で行えるように工夫します。必要に応じて介助を加えましょう。一方的に手助けをするのではなく、患者が意欲を持ち続けられるように支援します。
❸ リハビリ
家族もリハビリの場に積極的に参加し、患者とともに運動を楽しむことでモチベーションを高められます。簡単なストレッチや散歩など、患者の体調に合わせた活動を取り入れます。
❹ 栄養・水分補給
バランスの取れた食事を提供し、食欲が低下している場合は消化に優しいメニューを工夫します。水分補給を忘れず、脱水症状を防ぎましょう。患者の生活全般にわたるサポートは、家族の協力によってさらに効果が高まります。無理のない範囲で患者を支えつつ、必要に応じて外部の支援も活用してください。
パーキンソン病とALS 気になるQ&A「3選」
パーキンソン病とALSの方からよくある3つの質問にお答えします。
Q1. パーキンソン病のリハビリはどのような効果がありますか?
A. パーキンソン病のリハビリには、筋力維持や柔軟性の向上、バランスの改善が期待されます。また、転倒リスクを軽減し、日常生活の動作をスムーズに行うためのサポートにもなります。運動療法や作業療法を組み合わせることで、患者のQOL(生活の質)を向上させることが可能です。
Q2. ALS患者に適したリハビリ方法とは?
A. ALS患者に対するリハビリは、進行に応じて異なりますが、関節の柔軟性を保つパッシブストレッチや呼吸機能をサポートするリハビリが重要です。また、最新のロボット支援機器やコミュニケーションデバイスを活用することで、生活の質を高めることができます。医師やリハビリ専門家と連携して適切なプログラムを設計することが重要です。
Q3. 神経変性疾患の予防に効果的な生活習慣は?
A. 適度な運動(ウォーキング、筋力トレーニング)、抗酸化物質を含む食品(果物、野菜、魚)を中心としたバランスの取れた食事が予防に役立ちます。また、ストレス管理や十分な睡眠も神経細胞の健康を保つために重要です。定期的な健康診断を受け、早期発見に努めることも欠かせません。
まとめ
本記事では神経変性疾患であるパーキンソン病とALSについて、その病態や症状、リハビリ方法、予防策、家族のサポートに至るまで幅広く解説しました。運動療法や最新技術を取り入れたリハビリ、生活習慣の改善、そして家族による心理的な支援が、患者のQOLを高めるための鍵となります。疾患に対する理解を深め、専門家と連携しながら、患者のために適切な対応を行うことが重要です。本記事の情報が、皆様のケアや治療の一助となれば幸いです。
リハビリZONE岐阜では、『リハビリで笑顔を再生!!』を合言葉に、ボイタ法による施術とHAL®︎を用いた機能訓練を中心とした自費リハビリを行っております。これまでにリハビリで思うような結果が出ず諦めていた方、現在身体のことでお悩みのある方、もっとリハビリをしたいとお考えの方など、様々なニーズにお応えするための手段を多数ご用意しております。是非一度、体験リハビリを受けてみてください!スタッフ一同心よりお待ちしております。
お問い合わせ先
058-201-1356
営業時間
月-土 10:00-18:00
定休日
日曜日