脳卒中のこと
2025.12.07
脳卒中後の日常生活動作(ADL)の工夫
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こんにちは!リハビリZONE岐阜 理学療法士の松田裕之です。
脳卒中を発症された後、ご自宅での生活に戻る際、「以前は当たり前にできていたことが難しくなった」と感じることはありませんか?
脳卒中後の片麻痺(身体片側の運動機能障害)や、高次脳機能障害(例:注意が散漫になる、手順がわからない)、感覚障害(例:温度を感じにくい、触覚が鈍い)など、多様な後遺症により、日常生活動作の遂行が困難になる場合があります。
今回は、リハビリテーションの現場で使われる「ADL」という言葉の解説と、現役の理学療法士の視点から、在宅生活の安全性と自立度を高めるための具体的な工夫について、場面ごとに詳しくご紹介します!

目次
ADL・IADLとは?
リハビリテーションの分野では、日常生活動作を大きく二つに分けて考えます。
ADL (Activities of Daily Living)
日常生活動作。食事、更衣、入浴、排泄、整容(洗面や歯磨き)、移乗(ベッドから車椅子など)といった、生活する上で基本的な動作を指します。
IADL (Instrumental Activities of Daily Living)
手段的日常生活動作。ADLよりも複雑で高次な判断を伴う動作を指します。例えば、調理、掃除、洗濯、買い物、服薬管理、電話応対、交通機関の利用、金銭管理などです。
私たち理学療法士が中心となるリハビリテーションの目標の一つは、これらの動作の安全性を確保し、可能な限り自立度を高めることです。 そのためには、失われた機能の回復を目指すアプローチと同時に、残された機能(非麻痺側など)を活用し、環境や道具を工夫する「代償的アプローチ」が非常に重要になります。

場面別 ADL / IADLの工夫
安全性と自立度を高めるための具体的なアイデアを見ていきましょう。
調理(IADL)
片麻痺があると、片手での食材の固定や包丁の使用が困難になります。 また、熱湯・油による火傷のリスク、遂行機能障害による段取りの困難さも生じます。以下に調理に関する様々な工夫をご紹介します。
●道具の工夫
滑り止めマットや釘付きまな板:を用いることで、非麻痺側(動かしやすい側)の手で包丁操作に集中できるよう、対象物を安定させます。
●ユニバーサルデザイン
片手で開けられるオープナー、持ちやすい(握力が弱くても使える)包丁やピーラー、押すだけで計量できる調味料入れなどがあります。
●安全性の確保
ガスコンロではなくIH調理器を使用する(火傷リスクや消し忘れ防止)。キッチンタイマーを活用し、火加減や加熱時間を管理するなどの工夫ができます。
●段取りの工夫
レシピを簡略化したり、写真付きの工程表を作成したりする。冷凍野菜やカット済み食材、ミールキットなどを活用し、工程を減らすことも可能です。

掃除(IADL)
掃除機の操作、特にコードの処理が片手では難しくなります。 床にあるコードが麻痺側の足に絡まることによる転倒リスクは、在宅生活において看過できません。掃除に関しても様々な工夫をすることができます。
●コードレス掃除機
コードが存在しないため、このリスクを根本的に排除し、片手での操作性を格段に向上させます。
●ロボット掃除機
日常的な床掃除の負担を大幅に軽減します。
●フローリングワイパー/ハンディモップ
片手で手軽に使用でき、重い掃除機を持ち運ぶ必要がありません。
入浴(ADL)
浴槽をまたぐ動作は、片足立ちになる瞬間を伴うため高いバランス能力を要します。 浴室は滑りやすく、この動作は転倒する危険性が非常に高い場面の一つです。
●福祉用具の活用
バスボード(移乗台): この危険な「またぎ動作」を「座位でのスライド移動」に変換する福祉用具です。 動作の要求度を下げ、安全性を飛躍的に高めます。
●シャワーチェア
座ったまま安全に体を洗うことができます。
●浴槽内手すり・浴槽内台座
浴槽から立ち上がる際の支えとなります。
●整備の整備
浴室や脱衣所に滑り止めマットを敷いたり、脱衣所に暖房器具を設置し、ヒートショック(急激な温度変化による血圧変動)を予防することができます。
●動作の工夫
浴槽への出入りは、必ず非麻痺側(動かしやすい側)から行い、安定した体勢を確保します。
更衣(ADL)
片麻痺がある場合、服の着脱は大きな課題です。
●着患脱健(ちゃっかんだっけん)の原則
・服を着る時
「患側(麻痺側)」の腕や足から先に入れる。
・服を脱ぐ時
「健側(非麻痺側)」の腕や足から先に抜く。
これを守ることで、非麻痺側が自由に動き、着脱が容易になります。
●衣服の工夫
・前開きの服(ボタンやジッパー)を選ぶ。
・ボタン留めが難しい場合、ボタンの代わりにマジックテープに付け替える。
・「ボタンスルー」などの自助具を活用する。
・ゆったりとしたサイズや、伸縮性のある素材を選ぶ。
外出(IADL)
公共交通機関の利用時には、乗り降りの際の段差や、走行中の揺れに対する不安が伴います。
●動作の原則
乗降の順序(乗車時は非麻痺側から、降車時は麻痺側から)は、常に安定した支持基底面(=足が地面についている状態)を確保するための重要な原則です。
●杖や装具の使用
外出前に多目的トイレの場所を確認しておく、ラッシュアワーを避けるなど、時間に余裕を持った計画を立てるようにします。
買い物(IADL)
レジでの金銭授受、特に財布から小銭を取り出すといった細かい動作(巧緻性)が片手では困難になりがちです。
●支払い方法
がま口財布やコインケースの利用、またはキャッシュレス決済(電子マネー、クレジットカード)の導入は、この物理的な障壁を取り除くための代償手段です。
●運搬
ネットスーパーや宅配サービスを利用する。重い荷物を運ぶためのショッピングカート(杖代わりになるタイプもある)を活用する。
小さな工夫の積み重ね
これらの小さな工夫の導入や動作方法の見直しは、単に「できること」を増やすだけではありません。安全性を確保しつつ、これまで困難であった家事や趣味活動の再開を可能にします。 これは、ご本人の生活の質(QOL)の向上や、自己効力感(「自分でもできる」という感覚)の回復、さらには家庭内での役割の再獲得といった心理・社会面にも非常に良い影響をもたらします。

まとめ
今回は、脳卒中後の日常生活を支えるADL・IADLの工夫について解説しました。私たちが発信する情報が、脳卒中後の療養生活を送る皆様、そのご家族のリハビリテーション継続と、より良い生活の獲得に向けた一助となれば幸いです!
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