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脳卒中のこと

2024.02.07

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!
この記事では脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)で推奨されている脳卒中後の過ごし方やリハビリテーションについて解説します。診療ガイドラインとは、エビデンス(根拠のあるデータ)などに基づいて、最良と考えられる検査や治療法などを提示する文書のことです。ここに記載されていることだけが唯一の正解、というわけではありませんが、多くの医師が診療を行う上で指針としている内容です。脳卒中になられて、今後の生活のことやリハビリに関することでお悩みの方や、そのご家族などには是非知っておいていただきたい内容になっていますのでぜひ最後までご覧になってください。

脳卒中は再発する?

〜服薬アドヒアランスの低下は脳卒中再発予防にどう影響するか?〜
まずは結論から。脳卒中は再発することがあります。脳卒中になった方がその後の人生でもう一度脳卒中を起こしてしまう(再発する)事は決して珍しくありません。そのため、脳卒中後には高血圧症や脂質異常症などの原因に対する治療を行なったり、血液が固まって血管を詰まらせる原因となる”血栓”を予防したりする必要があるのです。しかし、退院後に多くの方の服薬アドヒアランスは急激に低下していくことが知られています。

服薬アドヒアランス“という言葉は馴染みがないかもしれませんが、要するに“患者さんがどの程度処方された通りに薬を服用しているか”という意味です。Stephensonらの研究では、脳卒中に限らず長期的な治療では平均的な服薬アドヒアランスは50%程度しかないことがわかっています。つまり約半分の患者さんは処方された通りに服薬をできていないということなのです!

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!
脳卒中後に退院してから約2年経過すると服薬率は降圧薬:74.2%、スタチン:56.1%、抗血小板薬:63.7%、ワルファリン:45%にまで低下するというデータがあるのです。このような服薬アドヒアランスの低下は脳卒中のリスク管理を不十分とし、脳卒中が再発するリスクが高いだけでなく、発症した場合に重症化しやすいことが多いこともわかっています。

最近では服薬アドヒアランスを向上させるための様々な研究が行われ、電話やボイスメッセージでのやりとりだけでなく、SNSを利用した定期的な経過観察を行うなどの工夫がされ一定の成果を上げています。処方された薬を正しく服用し続けることは、脳卒中の再発予防にとって最も重要な事項のひとつですから、ご本人が意識するだけでなく周りの方のサポートにより良好な服薬アドヒアランスを保つことはとても大切です。処方された薬を継続して内服する事はガイドラインにおいては【推奨度:A】【エビデンスレベル:高】となっており、圧倒的な根拠があるため強く推奨されている事項です。

リハビリに有効期限はある?

脳卒中発症後の経過は、病院での治療を行う急性期、リハビリ病院でのリハビリテーションを行う回復期、自宅に戻ってから生活する生活期に大別されます。生活期に入ると医療保険の制度上、急性期や回復期のように十分な時間リハビリを行うことができなくなってしまいます。しかし、ガイドラインでは生活期においてもリハビリが重要であると明記されています。歩行機能を改善したり日常生活動作(ADL)を向上したりするために以下のような訓練が推奨されています。

推奨度Aのリハビリ内容>
◉ トレッドミル訓練
◉ 歩行訓練
◉ 下肢の筋力増強訓練
◉ 地域におけるグループ訓練
◉ サーキットトレーニング

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!
最も理想的なのは、回復期から生活期に入った時にリハビリが途切れないように継続することですが、実際には制度の問題やご本人の意欲など、様々な理由でリハビリが途切れてしまうことも珍しくありません。そのような方々から、脳卒中を発症してから年単位で時間が経過してしまった場合や、一度リハビリをやめてしまった場合にもう一度リハビリを行うことで回復する見込みはあるのか?というご質問をよくいただきます。

この質問にガイドラインの文章を引用してお答えすると…

◉ 発症後1年以上経過した生活期脳卒中患者であっても外来リハビリテーション診療を行うことで歩行機能の改善、身体活動性の増加、転倒リスクの軽減が認められたという報告がある。

◉ 発症2年後まで歩行機能および日常生活動作(ADL)の改善がみられたという報告もある。

上記のように発症後年単位の経過でもリハビリをすることで機能改善は期待できる!ということがわかっているのです。つまり、リハビリを行うのに遅すぎるということはありません。

脳卒中後に自動車の運転はできる?

脳卒中後に社会復帰を目指す方にとっては自動車の運転をご自身でできるようになることも大きな目標のひとつになってきます。特に生活する上で自動車が欠かせない地域にお住まいの方にとっては、運転ができるか否かで自立した生活を取り戻せるかどうかが大きく変わってきます。

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!
現状では、自動車の運転を再開するための根拠のある明確な基準がありません。残存した障害(麻痺など)の程度や、脳卒中が再発するリスク、てんかん発作の危険祭、服用する薬剤の副作用などを総合的に考慮した上で運転再開の可否を慎重に判断するべきという記載があります。【推奨度:A】

特に発症後1年間は慎重な対応が必要とされており、運転を控える方が良いとする専門家の意見もあります。運転に必要な筋力や協調運動のトレーニング、瞬発力のトレーニングなどはリハビリをすることで改善していく可能性がありますが、自動車の運転を実際に再開するタイミングは重症度や患者さん個々の状況によっても異なるため、主治医に相談して慎重に行うようにしましょう。

薬で運動障害は改善する?

これに対する答えは残念ながらNOです。脳卒中後の運動障害に対して薬物療法が有効であることを証明した研究は今のところありません。つまり薬を飲んで麻痺を改善させることはできないのです。

一方でリハビリを行う事で運動障害が改善するという研究は多数あります。【推奨度:A】リハビリは脳卒中後の運動障害を改善させるための立派な治療手段として認められているのです。多くの研究が行われていて、具体的なリハビリの方法にまで踏み込んだものもあります。

例えば、「反復した課題特化型の訓練(=課題を決めてリハビリを繰り返し行う事)」は上肢の機能や歩行機能を改善させ、歩行距離も大きく改善することがわかっています。また、サーキットトレーニング(複数の訓練を順番に行なっていくリハビリ手法)を集団で行うことで歩行距離や歩行速度、バランス機能が改善するという研究もあります。現在の医学では、薬ではなくリハビリこそが運動障害に有効な治療方法なのです。

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!

リハビリで日常生活動作は改善する?

日常生活動作(ADL : activities of daily living)という言葉をご存知でしょうか?ADL (エーディーエルと読みます)とは、日常生活をおくる上で最低限必要な動作のことです。具体的には、布団から起き上がる、衣服を着替える、歩行または車椅子で移動する、食事を食べる、トイレで排泄をする、お風呂に入るなど、皆さんが日常生活の中で必ず必要とする基本的な動作のことです。これらのADLを自分自身で行えるかどうかが、自立した生活を送れるかどうかを判断するための重要な指標となります。

脳卒中後のリハビリでは、片麻痺失語症などの機能障害を改善することでADLの向上に繋がることもある一方、機能障害が改善してもそれが直接ADLの向上に繋がらない場合があります。つまり、脳卒中で失われてしまった機能を取り戻そうとするだけでは自立した生活に結びつかない可能性もあるのです。その方にとって何を改善すればADLが向上するのかを見極めて、最適なリハビリを行なっていくことがADL向上のための近道なのです。

【医師が解説】 脳卒中後の生活・リハビリに関する疑問をガイドラインから紐解く!

ガイドラインではADLを向上させるためのリハビリとして以下のような方法が推奨されています。

【推奨度:A】
◉ 姿勢保持能力向上
◉ 下肢運動機能の改善

すべての動きの基本と言っても良い自分の体を支えるための力(姿勢保持能力)や、移動に必要な下肢の運動機能を改善させることはADLの改善に直接つながることがわかっています。

【推奨度:B】
◉ 麻痺側の上肢を強制的に使用する訓練
◉ 課題指向型訓練
◉ 鏡を用いた訓練
◉ ロボットを用いた訓練
◉ 在宅リハビリテーション

リハビリに対して、「辛くて大変なもの」というイメージをお持ちの方も少なくないかもしれません。麻痺側の上肢を強制的に使う訓練や、課題を設定して同じことを繰り返し行う訓練がこのイメージに近いリハビリ手法かもしれません。しかし、このような方法もADLの改善につながるという根拠があるのです。また、鏡やロボットを使った方法なども有効であるとされています。

まとめ

いかがでしたか?今回は、脳卒中後に多くの方が疑問に思われることについて脳卒中ガイドラインの内容をもとにまとめてみました。脳卒中は再発し得るので、発症から時間が経過しても油断せず治療を継続していくことがとても大切です。

また、基本的にリハビリはどのタイミングで行なっても効果を期待できると考えて良いと思います。脳卒中後に社会復帰を目指すようなリハビリ意欲の非常に高い方だけでなく、日々の生活を少しでも自立していきたいとお考えの方、病気のためにモチベーションが下がってしまい一旦は諦めていたけれど、もう一度リハビリを頑張ってみようとお考えの方など、多くの方にとってリハビリは有効な手段です。

それぞれの身体・生活状況に合わせて一歩ずつ進んでいくことが大切です。医療・介護保険の制度の都合上リハビリが十分に受けられない場合には「自費リハビリ」という選択肢もあります。リハビリZONE岐阜ではリハビリに関して困っておられる「リハビリ難民」と呼ばれる方々に質の高いリハビリを提供することで社会復帰・機能改善のお手伝いをしております。是非一度体験リハビリにいらしてください。

 

リハビリZONE岐阜では、『リハビリで笑顔を再生!!』を合言葉に、ボイタ法による施術とHAL®︎を用いた機能訓練を中心とした自費リハビリを行っております。これまでにリハビリで思うような結果が出ず諦めていた方、現在身体のことでお悩みのある方、もっとリハビリをしたいとお考えの方など、様々なニーズにお応えするための手段を多数ご用意しております。是非一度、体験リハビリを受けてみてください!スタッフ一同心よりお待ちしております。

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