HAL®
2026.02.02
症例検討を再考する
症例検討は“正解を探す場”ではない
― 学会教育講演から学んだ、これからの症例検討のかたち ―
リハビリテーションの現場では、毎日のように患者さんの変化を見て、考え、対応を選択しています。
その中で欠かせないのが 「症例検討」 です。
症例検討というと、
「準備が大変」「批判されそう」「正解がわからない…」
といった声を耳にすることも多いのですが、本来これは 学びと気づきの宝庫 です。
■ 症例検討は、本当はどんな場なのか?
症例検討は、患者さんの課題に対してより良いアプローチを考えるための場であると同時に、臨床思考を“外に出す”練習の場 でもあります。
- 若手にとっては「考えを整理する練習」
- ベテランにとっては「臨床知を言語化し、次世代へ伝える機会」
立場が違うからこそ、得られる学びも変わってきます。
しかし現状では、「批判が怖い」「正解が求められる」「空気が重い」
といった理由から“安心して話せる場”になっていないことも少なくありません。
■ 症例検討は「答え合わせの場」ではない
リハビリの臨床には、すぐに説明がつかない現象や、複数の解釈が成り立つケースが数多くあります。
だからこそ、症例検討の本質は見えにくい現象を多職種・多角的な視点で眺め、新しい理解をつくっていくこと
つまり“見えないものを観る”ための思考を共有するプロセス が大切なのです。
■ 大事なのは「心理的安全性」と「構造化」
学会の教育講演では、症例検討をより良い場にするための工夫として、
- 発言しやすい場づくり
- 初学者でも考えやすい“思考の型”
- 批判ではなく「理由づけ」を大切にする姿勢
- ベテランが“結果”ではなく“考え方”を共有すること
などが取り上げられました。
特に印象的だったのは、臨床家の成長は、仮説が揺れた瞬間に生まれるという言葉です。
症例検討は、ただ情報共有するだけでなく、
“自分の理解が更新される経験”が得られる場であるべきだと感じました。
■ 参加者全員が「明日から使える」学びを持ち帰るために
症例検討がうまく機能すると、
- 若手は「考え方の筋道」をつかむ
- ベテランは「臨床知の棚卸し」ができる
- 組織には「思考を共有できる文化」が育つ
- 患者さんには“より良い介入”として還元される
つまり、
最終的には患者さんの利益につながります。
私自身、学会でこのテーマに触れ、
「症例検討の目的」
「理想的な対話のつくり方」
を改めて考え直すきっかけになりました。
■ インストラクショナルデザインで紐解く
個人的に今学んでいるインストラクショナルデザインを使って今回のテーマで考えてみました。
① 注意喚起
=「聴きたくなる」「考えたくなる状態」をつくる仕掛け
実装ポイント
見えにくい病態・判断が割れる症例動画を提示
→ 認知的不協和を作り、参加者の思考を瞬間的に動かす。
批判的・重い場になりがちな“症例検討の現状”を共有
「準備が重い」「批判の場になっている」
聴衆の“共感ポイント”を刺激し、自分事化を促す。
「症例検討は答え合わせではない」という問題提起
→ 聴衆の既存スキーマを揺さぶり、関心を引きつける。
注意喚起が働く理由
・臨床家は不確実性に反応する
・自分の経験と結びつく“痛点”をつくることで聞く姿勢が整う
・予測が難しい刺激(例:矛盾する症例)が集中を生む
② 関連性
=「これは自分の臨床に役立つ」「必要だ」
実装ポイント
若手とベテランへの価値を明確化
若手:臨床思考を言語化・整理する機会
ベテラン:臨床知(暗黙知)を言語化し伝承する機会
症例検討の本来の目的=患者の益を最大化する業務であることを強調
→ 活動の意義と日常業務の“意味づけ”を高める。
参加型で構造化された討議を導入
→ 「現場ですぐ使える」価値を示す。
心理的安全性の確保を前提にする
→ 自分の組織でも再現可能な仕組みとして関連性が高まる。
関連性が働く理由
・臨床家は「患者に還元できる」ことを強く動機づけられる
・役割(若手/中堅/ベテラン)ごとの利得を明確にすると参加意欲が上がる
・「組織で導入できる」具体策を知りたいというニーズが満たされる
③ 自信の形成
=「自分にもできる」「参加していいんだ」と感じられる仕組み
実装ポイント
思考のプロセスを段階化した“型”を提示
観察 → 解釈 → 仮説、の3段階
個人ワーク → 小グループ → 全体共有
批判を避けるルール設定
意見の「理由」を尊重
仮説は複数あってよい
→ ミスを恐れず発言できる
小集団で意見を出しやすい構造
2~4人のグループ
持ち時間を作る
ファシリテーションカードなども使用可
講師が“正解提示”ではなく“思考過程”をフィードバック
→ 若手の自信構築につながる
自信の形成が働く理由
・発言のハードルを下げると参加率が上がる
・“型”があると、経験値にかかわらず思考できる
・自分の考えが議論の一部になる経験が自信につながる
④ 満足感・定着
=「参加してよかった」「明日から活かせる」
実装ポイント
最後に“気づきの再整理”を行う
講師による総括
参加者が「学んだこと」「明日やる1つの行動」を言語化
自分の仮説が“変化した”経験を振り返る
→ 学習科学で最も深い満足感の源泉になる
職場で活かせるツール(ワークシート、思考の型)を提供
→ 即実践できる喜び
臨床知が交換される体験自体が満足感を生む
多様な視点
新しい理解
組織として成長する実感
満足感・定着が働く理由
・人は「成長を実感するとき」に強い満足を感じる
・思考が変化したプロセスは記憶に定着しやすい
・行動の「次の一歩」が明確だと定着していく
まとめ:
|
要素 |
発表内の該当構造 |
ねらい |
|
A:注意喚起 |
症例動画、現状問題、認知的不協和 |
聴衆の思考を動かす |
|
R:関連性 |
若手×ベテランの利得、臨床への価値 |
自分事化・動機付け |
|
C:自信 |
思考の型、批判回避、参加型ワーク |
発言しやすさを保証 |
|
S:満足感 |
気づきの整理、行動化ツール |
実践への転移と達成感 |
■ おわりに
症例検討は、批判や正解探しの場ではなく、
臨床家同士が“理解をつくっていく場” です。
これからの症例検討は、
もっと開かれた、もっと参加しやすい、もっと学びの深い場にできるはずです。


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