脳卒中のこと
2026.02.09
脳卒中後の高次脳機能障害・感覚障害への対処法
理学療法士の松田裕之です。脳卒中の後遺症というと、手足の麻痺をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、外見からは分かりにくい「見えない障害」に悩まされている方も大勢いらっしゃいます。それが、「高次脳機能障害」や「感覚障害」、「失語症」といった症状です。
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「なんだか集中力が続かない」
「麻痺側の手足の感覚がよくわからない」
「言いたい言葉がすっと出てこない」
これらの症状は、ご本人にとっては非常にもどかしく、周囲からは「怠けている」「ぼーっとしている」と誤解されてしまうこともあり、大きなストレスの原因となります。ご本人の辛さはもちろん、どうサポートすれば良いか分からず悩むご家族も少なくありません。
この記事では、そうした「見えない障害」に焦点を当て、それぞれの症状の特徴と、日常生活でできる具体的な対処法やリハビリの工夫を詳しく解説します。大切なのは、まず「なぜそうなるのか」を正しく知ることです。
注意障害とは?
注意障害は、高次脳機能障害の中でも特に多く見られる症状の一つです。一つのことに集中し続けたり、複数のことを同時に処理したりすることが難しくなります。

二つのことが同時にできない理由
私たちの脳は、普段、無意識のうちに多くの情報を処理し、必要な情報に注意を向け、不要な情報を無視しています。しかし、脳卒中によって脳のその機能がダメージを受けると、情報の整理がうまくいかなくなります。
例えば、「テレビを見ながら会話をする」「料理をしながら電話で話す」といった、以前は当たり前にできていた「ながら作業」が非常に困難になります。一つの作業に集中しようとしても、周りの物音や人の動きなど、他の刺激にすぐに気が散ってしまうのです。
生活の質を高める工夫
● 「一つずつ片付ける」シングルタスク
注意障害への最も効果的な対策は、「シングルタスク(一度に一つのことだけを行う)」を徹底することです。
作業の分解:料理であれば、「野菜を切る」→「炒める」→「味付けする」→「盛り付ける」というように、工程を一つずつ終わらせてから次に進む。
● 環境の単純化
作業をする時はテレビを消す、机の上を片付けるなど、集中を妨げる刺激をできるだけ減らす。
● メモやリストの活用
やるべきことを書き出し、終わったらチェックを入れることで、頭の中を整理し、やり忘れを防ぐ。複雑な世界をシンプルにすることで、脳の負担を減らし、落ち着いて物事に取り組めるようになります。
無視症候群とは?
無視症候群は、視力には問題がないにもかかわらず、片側(主に麻痺側である左側)の空間にある人や物事に気づきにくくなる症状です。

無視症候群の症状
食事の際に麻痺側のお皿だけ食べ残してしまったり、歩いている時に麻痺側の壁や人にぶつかってしまったり、車椅子の操作で麻痺側のブレーキをかけ忘れたり…。
これは「見えていない」のではなく、「意識が向いていない」状態です。脳の中で空間を認識する機能が損傷を受けたために起こります。ご本人は無自覚なことが多く、周りが指摘して初めて気づくケースも少なくありません。
無視症候群への対処方法
半側空間無視へのリハビリは、「失われた空間へ意識的に注意を向ける」練習を繰り返すことが基本です。
● 目印をつける
食事の際にはお盆の左端に赤いシールを貼る、食卓の左端に花を置くなど、「まずそこを見る」という目印を作ります。その目印から全体を見るように促します。
● 声かけの工夫
「左側も見てください」と具体的に声をかける。
● 環境設定
話しかける時は麻痺側から声をかける、ベッドを麻痺側が壁にならないように配置するなど、自然と麻痺側に注意が向く環境を作る。
地道な反復練習によって、意識的に左を見る習慣が身についていきます。
感覚障害とは?
感覚障害は、触った感覚、熱さや冷たさ、痛みなどが分かりにくくなる症状です。特に、「自分の足にどれくらい体重が乗っているか分からない」という固有感覚の障害は、リハビリを進める上で大きな壁となります。

感覚障害の対処方法
感覚が鈍くなっている場合、頼りになるのが「視覚」です。自分の体の状態を目で見て確認することで、鈍くなった感覚を補うことができます。私がリハビリの現場でよくお勧めするのは、「大きな鏡の前で、自分の姿を見ながら体重移動の練習をする」ことです。
1. 鏡の前に立ち、ゆっくりと麻痺側の足に体重をかけていく。
2. この時、鏡に映る自分の骨盤や肩が、左右にどれだけ移動しているかを目で確認する。
3. 「これくらい傾くと、これくらい体重が乗っているんだな」という感覚を、視覚情報と結びつけて体に覚えさせていく。
この練習を繰り返すことで、体重移動のコントロールが上手になり、歩行の安定に繋がります。
失語症とは?
失語症は、「聞く・話す・読む・書く」といった言葉を操る能力が障害される症状です。言いたいことがあるのに、「あれ」「それ」といった代名詞ばかりになったり、言葉が全く出てこなかったりします。

コミュニケーションの工夫
失語症の方とのコミュニケーションで最も大切なのは、「焦らず、ゆっくり待つ」姿勢です。ご本人は、言葉が出てこないことにもどかしさと焦りを感じています。周りが急かすと、さらに混乱してしまいます。
ご家族や周りの方ができる工夫として、
● クローズドクエスチョンを使う
「何がしたい?」と聞くのではなく、「お茶が飲みたいですか?」というように、「はい/いいえ」で答えられる質問をする。
● 実物や絵、文字を使う
ジェスチャーを交えたり、実物や絵カードを指差してもらったりして、意思の疎通を図る。
● 話の内容を推測して確認する
「もしかして、〇〇のこと?」と選択肢を提示し、ご本人に選んでもらう。
コミュニケーションは言葉だけではありません。表情や態度で「あなたの言いたいことを理解したい」というメッセージを伝え続けることが、ご本人の安心感と話す意欲に繋がります。
まとめ
「見えない障害」は、ご本人とご家族だけでは抱えきれない難しい問題です。
①症状を正しく理解する
「怠けている」のではなく「脳の機能障害」なのだと知ることが、適切な対応の第一歩です。
②環境をシンプルにする
「ながら作業」を避ける、目印をつけるなど、脳の負担を減らす工夫が生活の質を向上させます。
③言葉以外のコミュニケーションを大切にする
表情やジェスチャー、そして「待つ」姿勢が、ご本人の心を支えます。
もしご自身やご家族が「もしかして?」と感じることがあれば、一人で悩まず、医師や私たちのようなリハビリ専門職に気軽に相談してください。正しい理解が、未来を照らす光になります。
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