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脳卒中のこと

2023.11.17

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説〜その①〜

この記事では脳卒中治療ガイドライン2021に記載されている脳卒中を予防するために大切な6つのポイントを医師が解説します。この記事を最後まで読むことで、脳卒中にならないために必要なことを理解できますから最後までご覧になってください。

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説

はじめに

一度発症してしまうと生活の質が低下してしまったり、時には命に関わることになってしまったりする”脳卒中” に関する様々な疑問に対して、一般社団法人 日本脳卒中学会が監修している脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕」をもとに医師が解説します。ガイドラインというのは、数多くの論文や研究などをもとにEBM(evidence-based medicine=根拠に基づいた医療)に則って作成される治療指針です。脳卒中に関する情報はテレビ・書籍・インターネット上などに非常に多く存在します。最近では、様々な情報が手に入れやすくなった一方、その情報の信憑性をご自身で判断する必要がありますよね。ガイドラインに掲載されている内容は唯一の正解ではないものの、その分野の専門の医師たちが膨大な量の論文を長い期間にわたり吟味してまとめあげた根拠のある情報ばかりですから、参考になる点も多いと思います。通常、ガイドラインの内容は医師向けに記載されているため、一般の方が目にすることはそれほど多くないかもしれません。しかし、これらの情報を多くの方に知っていただきたいと思い、記載されている内容を医療従事者ではない方にもわかりやすいように噛み砕いて解説していきます。

今回はガイドラインの中で、推奨度Aに認定されている内容のみを厳選してお伝えします。もっと詳しく知りたい方は『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕』にアクセスしてみてください。

<推奨度Aとは>
ガイドラインの中でも”強い推奨”と定義されているので、そこに記載されている内容は”行うよう勧められる” あるいは“行うべきである”という位置づけです。推奨度Aになっている事は必ず行なった方が良い内容なので実践する価値があります!

第1回目は脳卒中の発症予防に重要な6つの危険因子について説明します。これらの危険因子に気をつけて生活したり病院での治療を受けたりすることで、脳卒中のリスクを低下できる可能性がありますよ。

脳卒中とは

脳卒中とは、人間の身体の制御盤の役割を果たしている脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)することにより脳の一部または大部分の働きが悪くなってしまう状態です。2021年の厚生労働省の人口動態統計によれば、脳卒中は日本人の死因の4位で、寝たきりとなる原因の1位の病気です。また、脳卒中の発症は年齢とともに急激に上昇します。

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説

脳卒中に関連する6つの危険因子

1. 高血圧

高血圧は脳卒中だけでなく、心血管に関連する病気の危険因子であることが知られています。血圧が高いほど脳卒中の発症率は高くなるため、高血圧の治療は脳卒中の予防にとても大切なのです。では、血圧をいくつぐらいにしておけばよいのでしょうか?大きく分けて2つのグループに分けられるのでご自分がどちらに当てはまるか確認してみましょう。

グループ1:血圧は130/80 mmHg未満が目標
・年齢が75歳未満
・糖尿病
・冠動脈疾患(心臓の血管の病気)
・腎臓病
・抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を内服中

グループ2:血圧は140/90 mmHg未満が目標
・年齢が75歳以上
・頚動脈(首の動脈)の狭窄がある

年齢が高くなったり、血圧が下がりすぎると良くない病気をお持ちだったりする場合は目標数値が少し緩くなるというイメージです。高血圧の治療は血圧を下げる薬を内服するのが基本ですが、同じ高血圧症という病気でも原因はそれぞれ異なるため、治療に最適な薬の種類も当然一人一人違います。どの薬がご自身に合っているのかについては、かかりつけの医師によく相談の上で処方してもらいましょう。

<推奨度A>
脳卒中発症予防のために、高血圧の患者さんでは血圧を下げる治療を行う!

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説


2. 糖尿病

糖尿病は生活習慣病の一つとして知られており、血液中の糖の値(=血糖値)が高くなることで発症します。初期にはほとんど症状がなく、糖尿病になっていることに気が付かない人も多くいます。しかし、” 糖尿病は万病のもと ”と言われるほど様々な病気の原因となるのです。血糖値が高い状態が持続すると血管に負担がかかり、その状態が長く続くと細い血管がつまったり、太い血管では動脈硬化を起こしたりします。結果として脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まってしまいます。ガイドラインにおいても2型糖尿病のある方は食事療法・運動療法・薬物療法を行うことが勧められています。

<食事療法>
食事療法としては、食物繊維の豊富な炭水化物を摂取すること、赤みの肉を避けること、地中海風の食事をとることが2型糖尿病で心臓・血管に関連する病気(=心血管イベント)を抑制することにつながるという研究もあるようです。

<運動療法>
運動療法によって血糖値のコントロールが改善し、心血管イベントの発症を抑制することがわかっていますが、特定の運動が推奨されているわけではありません。ご自身の年齢や体力に合った運動を行うのが良いでしょう。継続することが1番大切ですから、無理をせず好きなことをやるのが理想的だと思います。ガイドライン上には記載がありませんが、筆者は有酸素運動は有効な運動療法のひとつだと考えています。

<薬物療法>
薬物療法において推奨される薬剤選択などについては割愛しますが、糖尿病の治療に精通した医師の管理のもとに処方された薬を正しく内服することが何より大切です。

<推奨度A>
脳卒中発症予防のために、糖尿病患者さんでは食事・運動・薬物療法を行う!

腰痛に悩む女性がランニングマシーンでトレーニングをしている様子

3. 脂質異常症

高コレステロール血症は脳梗塞の危険因子であることが知られています。特に、動脈硬化と関連が強い”アテローム血栓性脳梗塞”という病気ではコレステロール値と脳梗塞を発症するリスクが相関するとされています。脂質異常症がある場合には悪玉コレステロールとして知られるLDLコレステロールを改善させる”スタチン”という薬剤を使用することが推奨されています。通常、血管の病気というのは長い年月をかけて蓄積したものが突然発症するので年齢が若い方が治療することで効果が得られると思われがちですが、スタチンは若い方だけでなく、75歳を超えた高齢者の方に対しても十分に脳卒中を抑制する効果があることが報告されています。生活習慣病のひとつである脂質異常症を治療することは、当然のことながら脳卒中発症のリスクを低減します。

<推奨度A>
脳卒中発症予防のために脂質異常症の患者さんではスタチン製剤を投与する。

 

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説


4. 心疾患

心房細動は不整脈の一種で、心臓にある心房という部屋が小刻みに震えることで血液の流れが淀んでしまい、血栓(血液の塊)が形成されやすくなります。心臓でできた血栓が血流にのって脳の血管を詰まらせてしまうことで脳梗塞をきたします。(心原性脳梗塞) 心房細動には心臓の弁に異常がある弁膜症性心房細動と非弁膜症性心房細動とがあります。いずれの場合でも心房細動自体が脳梗塞の危険因子であるため、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)による治療が推奨されています。一方で血液をサラサラの状態にしすぎると、逆に出血のリスクが高くなってしまうので、適度な状態に保つことが重要です。使用する薬剤や量は専門の医師の指示に従って治療を受けるようにしましょう。
非弁膜症性心房細動ではCHADS2 scoreという計算表が用いられます。心不全・高血圧・年齢が75歳以上・糖尿病があるとそれぞれ各1点、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往があると(2点)が加算され、点数が高いほど脳梗塞のリスクが高くなるとされています。点数やその他の細かな条件を勘案して、推奨される薬剤が決定されます。(表) 詳細な疾患や点数に対してどのような薬剤が推奨されているかについてここでは割愛しますが、心房細動に対しては抗凝固薬での治療が必要ということは覚えておきましょう。
6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説

<推奨度A>
非弁膜性心房細動に対する心原性脳塞栓症の一次予防には直接阻害型経口抗凝固薬が第一に勧められる。

 

5. 肥満・メタボリックシンドローム

眠時無呼吸症候群・末梢動脈疾患など

<肥満>
肥満には内臓脂肪型と皮下脂肪型があり、内臓脂肪型は糖尿病や脂質異常症、高血圧などを引き起こすことが知られています。型の違いに関わらず、肥満自体が脳卒中などの心血管イベントの発症を1.5倍ほどにするという報告や、BMIが30以上になると脳卒中の発症リスクが1.14倍になるという報告などがあります。

<メタボリックシンドローム>
メタボリックシンドロームは、ウエスト周囲径(お臍の高さの腹囲)が男性85cm、女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質のうち2つ以上が基準値から外れた際に診断されます。メタボリックシンドロームと脳卒中発症の関係は多くの研究でわかっており、特に女性の方が男性よりもリスクが高くなることが知られています。

<睡眠時無呼吸症候群>
少し意外かもしれませんが、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の発症リスクを2倍以上も高めることがわかっていて、特に男性でその傾向が強いようです。睡眠時無呼吸症候群の治療法法として知られているCPAP(夜間に持続的に気道内の圧を高める治療法)を行なったとしても、脳卒中の発症を予防できるという効果は証明されていません。

<末梢動脈疾患>
末梢動脈疾患をお持ちの方は症状の有無に関わらず、脳卒中のハイリスク群であるためリスク管理が必要とされています。末梢動脈疾患は死に至るような脳卒中が2.28倍起こりやすいという研究があります。そのため、禁煙・血圧管理・スタチン内服・アスピリン又はクロピドグレル内服などが脳卒中発症予防のために推奨されています。

<推奨度A>
末梢動脈疾患は脳梗塞のリスクを高めるため、喫煙・高血圧・糖尿病・脂質異常症などのリスク因子をより厳格にコントロールすることが勧められる。

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説

 

6. 慢性腎臓病

慢性腎臓病患者さんでは腎臓病の進行と脳卒中発症の予防のために血圧の管理が重要とされています。具体的な目標値としては、(糖尿病がある場合には) 130/80mmHg未満にすることで脳卒中の発症率が抑制されることが示されています。糖尿病がある方に対して、厳格な血糖管理をすることで腎臓病の進行は抑制できるとされていますが、脳卒中の発症を抑制する効果はわかっていません。また、血液透析をしている方は脳出血・脳梗塞のリスクが高くなってしまうことが知られています。慢性腎臓病に対して、推奨度Aとなるような”行うよう勧められる” “行うべきである”というよう事項はありませんでした。

まとめ

脳卒中は寝たきりになる原因の1位の病気ですから、脳卒中にならない様に予防することがとても重要と言えます。脳卒中は、誰にでも起こる可能性があり、特に高齢者の方は注意が必要です。自分では気がつかないうちに体に変化が起きて、ある日突然発症し生活が劇的に変化してしまう…というとても怖い病気だと思われるかもしれませんが、生活習慣病をコントロールすることで脳卒中を予防したり、脳卒中が起きてもすぐに専門的な治療を受けることで症状を軽くすませたり、リハビリで後遺症を改善したり、薬や手術で再発を防いだりできることも分かってきています。

6つの危険因子を知って脳卒中を予防せよ! 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕を医師が一般の方向けに解説

今回は脳卒中治療ガイドライン2021改訂2023〕をもとに、脳卒中発症予防のために必要な6つの危険因子の管理について解説しました。一般的に広く知られていることではありますが、いわゆる生活習慣病の管理が脳卒中の予防には大切だということが改めて確認できたのではないかと思います。病気の予防や早期発見・早期治療のためには、定期的に健康診断を受け、必要に応じて病院に通って治療を受けることはとても大切です。但し、すべてを医師に任せるのではなく、ご自身で病気に対する知識を習得し、日々の生活で気をつけることは病院に通院するのと同じぐらいに重要な事だと思います。是非今日からの生活の参考になさってください。

 

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