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脳卒中のこと

2025.01.20

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~

こんにちは、リハビリZONE岐阜の理学療法士、後藤です。
脳卒中(脳梗塞や脳出血)発症後には様々な後遺症が残ることがあります。例えば、手足が動かしにくくなる運動麻痺や、身体の感覚がわからなくなってしまう感覚麻痺、あるいは言葉が出にくいなどの言語障害などが挙げられます。このような症状の他に「半側空間無視」という状態があります。今回は、半側空間無視の原因、症状、診断方法、治療とリハビリテーション、さらには患者さんやそのご家族が日常生活で直面する課題について詳しく解説していきます。

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~

半側空間無視とは?

半側空間無視(はんそくくうかんむし)とは、自分の周囲の片側の空間に対する認識や注意が欠ける状態を指します。これは、脳の損傷によって引き起こされる神経心理学的な障害であり、特に右脳の損傷後に左側の空間を把握できなくなります。自分の視野の片側にある空間だけでなく、物体を無視してしまうのです。そのため、自分自身の身体を認識することもできなくなってしまう場合があります。この症状は、脳卒中後に発生することが多く、注意機能や空間認識の障害によって生じていると考えられています。半側空間無視の症状があると、日常生活に大きな支障をきたします。

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~

半側空間無視の原因

半側空間無視は、主に右側の頭頂葉や側頭葉、前頭葉などの脳の特定の部位が損傷を受けた場合に起こります。この状態は、脳卒中、外傷性脳損傷、腫瘍、神経疾患などが原因となります。

特に右半球が損傷した場合に発生することが多い理由として、右脳が両側の空間に注意を向ける役割を持っている一方、左脳は主に右側の空間に注意を向けるという点が挙げられます。そのため、右脳が損傷を受けると、左側の空間が完全に無視されることがあります。

<半側空間無視の原因>
1. 脳卒中
2. 外傷性脳損傷
3. 脳腫瘍
4. アルツハイマー病/パーキンソン病

1. 脳卒中
半側空間無視の最も一般的な原因は、脳卒中による右半球の損傷です。右側の頭頂葉、側頭葉、前頭葉などが損傷を受けると、左側の空間に対する注意が失われることがあります。

2. 外傷性脳損傷
事故や転倒などによる頭部への衝撃も、半側空間無視を引き起こす可能性があります。

3. 脳腫瘍
脳腫瘍が右脳の特定の部位を圧迫することにより、空間認識に影響を及ぼす場合があります。

4. アルツハイマー病やパーキンソン病
認知症や神経変性疾患の進行によっても、半側空間無視が現れることがあります。

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~

半側空間無視の主な症状

半側空間無視の症状は、個人個人によって異なるものの、次のような一般的な特徴が見られます。

<半側空間無視の症状>
1. 視覚的な無視
2. 身体的な無視
3. 触覚や聴覚の無視
4. 観念的な無視
5. 運動の偏り

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~
1. 視覚的な無視
実際には見えているはずなのに、脳の機能が低下することでそれを認識できない状態となるため、自分の左側にある物や人に気づかないことがあります。たとえば、お皿に盛られた食事の左側の部分だけを残してしまったり、(いることに気が付かないので)部屋の左側にいる人とは話さないなどの行動が見られます。

2. 身体的な無視
信じられないかもしれませんが、自分自身の身体の左側部分に気づかないことがあります。たとえば、左腕の存在を認知できていないので、左腕だけ動かさなかったり、衣服を着る際に左袖を無視して更衣してしまうなどといった行動をすることがあります。

3. 触覚や聴覚の無視
左側からの触覚刺激や音に反応しないこともあります。たとえば、左耳に向けて話しかけられても反応しないこと、左肩に触れられても気づかないことがあります。

4. 観念的な無視
視覚や身体的な無視に加え、左側の物事を思考や計画の中で認識しない場合があります。たとえば、地図を描く際に左半分を描き忘れることがあります。

5. 運動の偏り
左側の空間での動作が困難になることがあります。たとえば、車椅子を使う際に左側に障害物があっても気づかずに衝突する、といったことが起こりえます。

半側空間無視の診断方法

【理学療法士が解説】脳卒中後の「半側空間無視」とは ~なぜ右側ばかり気になるの?~

1. 行動観察
日常生活での行動を観察することで、半側空間無視の症状を確認することができます。たとえば、食事中に皿の片側だけを食べる、文字を書く際に紙の右側だけを使うといった行動が見られます。

2. 紙と鉛筆を用いた検査
以下にご紹介するような簡単なテストで半側空間無視を診断することができます。

● 線分二等分試験
:被験者に紙の上の線分の中央を指すよう指示します。半側空間無視がある場合、線分の中央ではなく右寄りの位置を選ぶことがあります。

● クロスアウト試験
:紙に描かれた図形の中で、特定の図形を消すよう指示します。半側空間無視があると、左側の図形を無視する傾向があります。

● 描画試験
:時計や家などの絵を描くよう指示すると、左半分が欠けていることがあります。


3. 画像診断

MRIやCTスキャンを用いて、脳の損傷部位を特定することができます。

半側空間無視の予後について

半側空間無視の予後(病気や障害がどのように経過するか)は、症状の重症度、発生した原因、リハビリテーションの介入状況など、多くの要因に左右されます。一般的に、半側空間無視は完全に回復しない場合もありますが、適切なリハビリテーションとサポートによって症状を軽減させることが可能です。

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〜重症度別の半側空間無視の自然経過〜

1. 軽度の場合
軽度の半側空間無視は、発症から数週間から数ヶ月以内に自然回復する場合があります。これは、脳の可塑性(損傷後に脳が機能を再編成する能力)によるものと考えられています。

2. 中等度から重度の場合
重度の半側空間無視では、自然回復の速度が遅く、症状が長期間残る可能性があります。ただし、多くの患者がリハビリテーションを通じて改善を経験します。リハビリの進行度には個人差があり、完全回復に至らなくても、日常生活に適応できるまでに回復するケースも決して珍しくありません。

3. 慢性例の場合
時には、発症後1年以上経過しても症状が残る「慢性の半側空間無視」となる場合があります。この場合でも、適切な支援を受けることで、生活の質(QOL)を向上させることができます。

半側空間無視に対するリハビリ

リハビリの目標
半側空間無視の治療は、患者が失った機能を取り戻すだけでなく、残存する能力を活用して日常生活を改善することを目的としています。


1. 視覚的リハビリテーション
無視している側に視線を向けるように指示します。たとえば、紙の左側にあるターゲットを見つけさせること、視線を左側に移動させる練習を行います。また、無視している側から視覚的な刺激を探すスキャン作業を実施します。例として、絵や文字が載っている紙で特定のアイテムを探させる活動があります。

2. 感覚刺激を用いた訓練
触覚や音声刺激を用いて患者が無視している側に触覚や音声を与えることで、その側への注意を促します。たとえば、患者の左腕を軽く触ることや左側で音を鳴らします。

3. 認知的リハビリテーション
エラーを指摘して修正 患者が無視側を忘れている場合、指摘してその方向を意識するようにします。課題の複雑さを調整 簡単な活動から始めて、段階的に難易度を上げることで成功体験を積ませます。

4. 注意喚起の訓練
患者が無視している側に注意を向けるように促す訓練が行われます。たとえば、視覚的な目標を左側に配置して、患者がそれを意識的に探す練習をします。

5. プリズム眼鏡
プリズムを使った眼鏡は、患者の視野を調整することで、無視されている側の認識を改善するのに役立つ場合があります。

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6.リマインダー技術
日常生活で注意を喚起するリマインダー(例えば、時計やカレンダーに左側のタスクを記載する)を利用することで、患者が無視している側を意識する手助けをします。

7. 鏡を使ったリハビリ
鏡を使用して無視側の身体や空間を視覚的に補助します。この方法は特に身体無視の改善に効果的です。

8.  家族の支援と教育
家族や介護者に対して、半側空間無視に対する理解と適切な対応方法を教育することが重要です。たとえば、患者が無視しやすい側に重要な物を置かない、話しかける際には患者が注意を向けやすい位置から行うなどの工夫が必要です。

日常生活の工夫

半側空間無視の患者が自立して生活を送るためには、環境を工夫することが重要です。


1. 環境の整備
重要な物品は無視されない側に配置します。たとえば、電話やリモコン、食器などを右側に置くとよいでしょう。

2. 活動の計画
一日の予定を立てる際には、無視している側のタスクに特別な注意を払うようにします。介助者がサポートすることで、患者が全体を把握しやすくなります。

3. 支援技術の活用
リマインダーアプリや音声ガイド付きのデバイスを活用することで、患者が左右のバランスを意識しやすくなる場合があります。

4. 転倒や事故の防止
無視側の空間を意識しないため、転倒や交通事故のリスクが高まります。障害物のない安全な環境を整えることが重要です。

5. 介護者の役割
介護者は患者の行動を観察し、日常生活での困難を軽減するサポートを行います。たとえば、服を着る際や食事の際に、無視側を意識させるよう促します。

6. リハビリテーションへの参加
定期的なリハビリテーションを続けることで、患者の認識能力や日常生活能力が向上します。

まとめ

いかがだったでしょうか。半側空間無視は、脳の損傷によって引き起こされる複雑な症状であり、患者の日常生活に大きな影響を及ぼします。視覚や注意の偏りにより、片側の空間や物事を認識しづらくなるこの症状は、患者本人にとっても周囲にとっても理解が難しいものです。しかし、適切な診断と治療、そしてリハビリテーションを通じて、多くの患者が症状を軽減し、より良い生活を送ることが可能です。

今回取り上げたように、早期の介入やリハビリテーション、患者を取り巻く環境の調整は、回復の可能性を高める鍵となります。また、家族や介護者にとっても、症状への正しい理解と効果的な対応方法を学ぶことが重要です。これにより、患者が安心して生活できる環境を整え、心身の負担を軽減することができます。

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