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脳卒中のこと

2026.03.09

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~
こんにちは!理学療法士の松田裕之です。
ご家族が脳卒中を発症され、退院後の生活を共に歩まれている介助者の皆様へ。日々のサポート、本当に、本当にお疲れ様です。

当事者ご本人が一番大変なのはもちろんですが、その隣で支え、励まし、時にはもどかしい思いや、つい感情的になってしまう自分への嫌悪感を抱えながら寄り添う皆様のご苦労も、計り知れないものがあると感じています。

「どのくらい手伝ってあげるのが、本人のためになるのだろう?」

「良かれと思ってしたことが、本人のやる気を削いでいないだろうか?」

「介助で自分の腰を痛めてしまいそうで、毎日が不安だ…」

現場では、このような切実な声を数多く耳にします。介助は、身体的な負担だけでなく、精神的にも非常にエネルギーを要するものです。

今回は、そんな介助者の皆様の疑問や不安に寄り添い、ご本人と介助者、双方にとってより良い関係を築くための介助のポイントについてお話しします

大切なのは、
「ご本人の力を引き出すサポート」と
「介助者自身の心と身体を守ること」

この二つのバランスを取るためのヒントをお伝えします。

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~

「見守る」勇気は、最高の治療薬

試行錯誤=脳が働いている証拠

リハビリの現場で、ご本人が服のボタンを留めようと一生懸命に試行錯誤している時。なかなかうまくいかない様子を見ていると、つい「手伝いましょうか?」と手を出したくなりますよね。その優しさは、もちろん非常に尊いものです。

しかし、その瞬間、少しだけ待ってみてください。ご本人が

「どうすれば指が動くかな」

「この角度ならどうだろう」

と考えているまさにその時、脳は必死に新しい神経回路を再構築しようと働いています。うまくいかない経験も、成功への道筋を探すための重要なデータとして脳に蓄積されているのです。もちろん、ご本人が疲弊しきっていたり、明らかに危険が伴ったりする場合は、適切なサポートが必要です。

しかし、ご本人が「自分でやりたい」という意欲を見せている時は、その挑戦を優しく見守ることも、回復を支える非常に大きな力になるのです。

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~

成功体験こそが何よりの治療薬

私たち理学療法士が行うリハビリよりも、もっと効果的な治療薬があります。それは、ご本人の「自分でできた!」という、心からの成功体験です。

昨日までできなかったことができるようになった。

時間がかかったけれど、誰の手も借りずにズボンが履けた。

この達成感と喜びは、脳にとって最高の報酬となります。「やればできる」という自信は、ドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促し、リハビリへの意欲をさらに高めるという素晴らしい好循環を生み出します。

介助とは、全てを代わりに行うことではありません。ご本人が安全に、そして成功体験を得られるように、環境を整えたり、少しだけヒントを与えたり、そして何よりその挑戦を信じて応援すること。その「優しいまなざし」こそが、リハビリの専門家にも真似できない、ご家族ならではの強力なサポートなのです。

介助者の身体を守るための方法

「ベッドの高さ」が腰痛を防ぐ秘訣

毎日の着替えや体位変換の介助で、腰に負担がかかっていませんか?
介助による腰痛は、多くの介助者が抱える深刻な問題です。

この腰痛を防ぐための非常に簡単で効果的なヒント。それは、「介助を行う際にベッドの高さを、介助者の腰の高さ(おへその高さ)程度まで上げること」です。多くのご家庭では、ベッドを低い位置で使いがちですが、介助者が前かがみの姿勢になると、腰には体重の何倍もの負担がかかります。

ベッドを高く調整するだけで、介助時の高低差がなくなり、前かがみの姿勢を防げます。これにより、腕力に頼らず、自分の体重移動を利用した「力に頼らない介助」が可能になるのです。

介護用の電動ベッドには高さ調整機能がついている場合がほとんどです。ご自身の身体を守ることは、長く介助を続けるために最も重要なことです。ぜひ今日から実践してみてください。

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~

力に頼らない介助技術

介助の基本は、人間の自然な動きの力学的原理「ボディメカニクス」を活用することです。難しく聞こえますが、ポイントはシンプルです。

● 足を肩幅に開く
:身体が安定します。

● 膝を軽く曲げ、腰を落とす
:重心が低くなり、安定感が増し腰への負担が減ります。

● 相手に体を近づける
:距離が近いほど、小さい力で動かせます。

● 大きな筋肉を使う
:腕の力だけでなく、足や背中など、身体全体の力を使う意識を持ちましょう。

● 水平に移動させる
:相手を持ち上げるのではなく、滑らせるように動かします。

これらの原則を少し意識するだけで、介助は驚くほど楽になります。訪問リハビリのスタッフや、地域の介護教室などで指導を受けることもできますので、お気軽に参加してみてください。

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~

介助者自身の心と人生を大切にする

介護は、時にゴールの見えないマラソンのように感じられるかもしれません。だからこそ、介助者自身が心身ともに健康であることが何よりも大切です。決して、一人で抱え込まないでください。

「疲れた」「辛い」「もう嫌だ」と感じることは、決して悪いことではありません。それはあなたが真剣に向き合っている証拠です。訪問看護やデイサービス、ショートステイなど、家族の負担を減らすための介護サービスは、そのために存在します。

ケアマネジャーや地域包括支援センターは、そうした制度活用のプロフェッショナルです。「少し休みたい」と感じたら、ためらわずに相談してください。相談する時の切り出し方は、「最近、少し疲れが溜まってきてしまって…」という一言で十分です。そして、意識的に自分のための時間を作りましょう。

趣味の時間、友人とのおしゃべり、ただぼーっとする時間。ほんの少しでも介護から離れる時間を持つことが、心のバランスを保ち、結果としてご本人にも優しく接することができるようになります。

【理学療法士が解説】脳卒中の家族を介護するためのコツ~腰痛と心の持ち方~

あなたが笑顔でいることが、ご本人にとっての何よりの安心感に繋がります。支えるあなた自身も、どうか大切にしてください。

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