-原因別- TIAの治療方法

一時的な脳梗塞である一過性脳虚血発作(TIA)の際に行われる治療についてご紹介します。TIA自体は血液の塊である血栓が一時的に脳の血管を詰まらせてしまうことで起きるのですが、血栓ができる原因は以下の2つが知られています。

これらの原因によって治療方法が異なります。

動脈硬化が原因の場合

抗血小板療法

動脈硬化が背景にある場合、動脈の壁が傷つきやすくなります。何らかの理由で血管の壁に傷がつくと、そこに血小板という血液の中に含まれている成分が集まってきて傷を治そうとします。その時に、血小板が集まってできた血栓が、脳の動脈を詰まらせることで脳梗塞の症状が起きます。しかし、これらの血栓は脆く、比較的溶けやすい性質をもつため、比較的すぐに血流が再開するというメカニズムでTIAが発症します。そのため、血小板が集まりにくくするような薬である抗血小板薬を内服することが治療になります。アスピリンやシロスタゾール、クロピドグレルなどなどを内服することで、血小板が塊になることを防ぐような薬剤を使用します。

<アスピリン>
最もよく使われる薬剤です。少ない量(低用量)で行われることが多いですが、胃の痛みなどの副作用があったり、脳出血のリスクが上がったりすることもあります。

<シロスタゾール>
動脈硬化を予防する作用や、血流を改善する作用も期待できる薬剤ですが、副作用として頭痛や頻脈などがみられることがあります。

<クロピドグレル>
最も新しい薬で、アスピリンよりも血小板の凝集を抑える効果が強いのが特徴です。副作用は比較的少なく、使いやすい薬でもあります。

外科的治療

動脈硬化が進行している場合は、血管の通り道がかなり狭くなっている可能性があります。そのような状態かどうかを確認するために、超音波検査などが行われます。検査の結果、首の動脈(頚動脈)に狭窄がある場合は、動脈の中にステントという金網のような筒をいれて血管を広げる治療が行われます。

心房細動が原因の場合

心房細動では、心臓の中で血栓が形成されます。その血栓が何かの拍子に心臓から出て、脳の動脈に詰まるのが脳梗塞です。心臓でできた血栓は大きく、溶けにくいという特徴がありますが、偶然にも詰まった血管がもう一度流れるようになることで、一時的な脳梗塞であるTIAに留まる場合があります。心房細動は心電図検査で見つけることができるので、TIAを起こした原因が心房細動であるとわかれば、心臓で血栓ができないようにする、抗凝固療法を行います。

まとめ

TIAと診断された後に飲み薬だけで脳梗塞の発症を防げるようであれば1週間程度の入院で済むことが多いでしょう。MRIなどの画像検査で脳梗塞がみつかった場合には、梗塞した範囲が広がっていないかを確認し、より重症な脳梗塞を起こさないようにするために2週間程度の入院治療が行われます。TIAと診断された場合には、放置すると重篤な脳梗塞になってしまうリスクが高いので、原因を究明して治療を行うことが大切です。